2024年9月26日(日本時間)に開催されたMeta社の開発者会議「Meta Connect 2024」にて、新ARグラス「Orion」が発表されました。
今年2月に発売されたApple Vision Proも革新的なデバイスとして話題になりましたが、「Orion」も日常、世界が変わるかもしれないデバイスとして大きな注目を集めています。
この記事では、なぜ「Orion」が日常を変える可能性があるのか、特徴やビジネスへの影響をわかりやすくご紹介します。
Orionの概要
Orionは「Meta Connect 2024」のマーク・ザッカーバーグCEOの基調講演によって発表されたプロトタイプです。
10年がかりで開発され、全部で50分の基調講演のうち、約15分もの時間をかけて発表したことからもその意気込みが感じられます。
「Meta Connect 2024」基調講演:
Metaは公式リリースでOrionを「これまでに作られたARグラスの中でも最先端の製品だと考えています。実際、これはスマートフォン以来、開発が最も難しいコンシューマーエレクトロニクス製品かもしれません。」と表現しています。
公式の紹介動画:
Metaが開発するXRデバイスといえばヘッドセット型の「Meta Quest」がありますが、「Orion」はグラス型で、より日常的に使うことが想定されたデバイスとなっています。
従来のARグラスはケーブル接続のものが多く、ワイヤレスであってもグラスそのものの従量が重くなる、幅が広くなるなど日常使いが難しくなっていましたが、Orionはワイヤレスであり、見た目も少しフレームの太いメガネといった形状です。
発売日・価格
Orionは現段階では限られた関係者向けのプロトタイプであり、このまま発売されることはありませんが、消費者向けに展開することを視野に入れ開発が進められています。
発売日、価格も現段階では明確に発表されていません。
Orionの特徴
Orionには主に4つの特徴があります。
①約70度という広い視野角
「視野角」とは、ARグラスを装着した際に、デジタル情報が表示される範囲のことです。簡単に言うと、ARグラスを通して見える仮想世界の広さといえます。
視野角が広ければ広いほど、現実世界と仮想世界がより自然に融合し、あたかも仮想世界の中にいるような没入感を体験できます。
従来のARグラスの視野角はRokid Maxが50度、XREAL Air 2 Ultraが52度と、最大でも50度前後となっていますが、Orionは約70度と、ARグラスの中でも最大クラスの視野角になっています。
Orionのレンズはガラスではなく、炭化ケイ素という素材で作成されています。炭化ケイ素は非常に軽量で、歪みや迷光(不要な光が入ってしまうこと)が発生せず、屈折率が高いという特性を備えているため、約70度という広い視野角を実現することが可能になっています。
ヘッドセット型は視界全体を覆うことで、現実世界とデジタル情報をシームレスに融合させることができますが、ARグラスでは表示領域が狭いため、現実世界との間に違和感が生じやすく、自然なAR体験を妨げていました。
Orionは広い視野角を実現することで、従来のARグラスの課題を克服することが期待されています。
②EMG(筋電図)信号を読み取るリストバンド
ARグラスは音声、視線、ハンドトラッキング、コントローラーなどから操作するのが一般的です。
Orionは音声、視線、ハンドトラッキングに加え、EMG(筋電図)信号による操作を組み合わせています。
EMG(Electromyography)は、筋肉が収縮する際に発生する電気的な活動を記録するものです。この電気信号を解析することで、筋肉の働きや神経の伝達状態などを捉えることができます。
EMGリストバンドを装着していれば、腕を身体の横におろした状態でも、少し手を動かすだけで楽にスワイプ、クリック、スクロールなどの操作が可能になります。
暗い環境や公共の場で、センサーの視界に手がなくても操作できることも従来のハンドトラッキングとの大きな違いです。
③100g以下の軽量で屋外でも使用可能
従来のARグラスには外部バッテリーやグラスそのものが重く、移動しながらや屋外での使用には向かないという課題がありました。
Orionは軽量なマグネシウムフレームなどの独自材料と革新的な熱管理技術の採用、そしてセンサーとカメラの小型化によって、本体は100g以下と軽量でコンパクトに保たれています。
また、ワイヤレスのコンピュートパックが付属し、アプリのロジック処理はコンピュートパックが行うため、本体が軽量化されることに加え、ケーブルの煩わしさもなく操作することができます。
④MetaAI搭載
Meta AIとは、Meta社が独自に開発したAIで、Instagram、Messenger、WhatsAppなど、Metaが提供するプラットフォームにも統合されています。
OrionにはスマートアシスタントMeta AIが搭載され、Orionを通して見えているものをAIが把握し、提案や操作の補助をすることができます。
例えば動画のように、見えている食材が何かを判別し、適切な夕飯のレシピを提案することなどができます。レシピの手順や、分量と火加減の目安をもOrionが説明し、レシピの検索から調理まですべてハンズフリーで行うことができます。
何がすごいのか?なぜ未来を変えるのか?
ARグラスは各社から多数発売されてきましたが、処理能力や表現力の制約、有線接続が必要、重くかけ続けられない装着感の制約などによって、ユースケースも限られ、まだ日常生活、社会全体に広まっているとはいえない状態です。
軽く移動しながら使用でき、ARグラスでありながら広い視野角を持つOrionは、これまでARグラスが超えられなかった障壁を乗り越え、日常生活の様々な場面で活用できるようになる可能性があります。
ビジネスにおいても、遠隔地からでも共同作業を行ったり、より直感的な方法で情報にアクセスしたりすることで、働き方が大きく変化する可能性があります。
ARグラスのビジネス利用は、現状は製造業や建設業など、専門的な領域では進みつつありますが、それ以外の業界では限られた一部にとどまっています。
Orionの登場によって、製造業や建設業だけでなく、様々な業界で活用が進むことも想定されます。
ザッカーバーグCEOはOrionを「タイムマシンのようなもの」と表現しており、私たちの未来の生活や働き方を大きく変える可能性があることは間違いないでしょう。
まとめ
軽く屋外でも使用でき、ARグラスでありながら広い視野角を持つOrionは、使いやすさと性能を兼ね備えた画期的なデバイスです。
私たちの日常や働き方を大きく変える可能性のあるデバイスであるOrionについて、少しでも理解を深めていただけたら幸いです。
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