【6DoF?オクルージョン?】ARの知っておきたい専門用語まとめ

本記事では、6DoFやオクルージョン、デジタルツインといった、ARを勉強しているとよく遭遇する専門用語について、意味をまとめていきたいと思います。

オクルージョン

スクリーンショット引用

ARのニュースでよく耳にする「オクルージョン」という言葉。これは、より自然なARコンテンツを開発する上で欠かせない技術(処理)なのです。

現実世界に溶け込んだような自然なARを作りたいとき、単純に3DCGを上から描画するだけでは不十分です。なぜなら、上図の左の画像ように現実世界と3DCGの前後関係が破綻してしまうためです。

これを改善するためには、現実世界と仮想世界の前後関係を計算して、奥にある3DCGは欠けた状態で描画するという処理をしなければなりません。この処理のことを「オクルージョン」と言います。



上図、右の画像では、人物の足に被るピカチュウの体の一部が消えています。
このような視覚処理をすることで、人物の向こう側にあたかもピカチュウがいるようなリアリティを与えることができます。

上図で引用しているスクリーンショットの、元の動画もぜひ合わせてチェックしてみてください。

https://www.youtube.com/watch?v=7ZrmPTPgY3I

6DoF(3DoF)

AR/VRにおいて頻繁に登場する「6DoF(シックスドフ)」「3DoF(スリードフ)」とは姿勢と回転の自由度のことです。

「DoF」「Degree of Freedom(自由度)」の略で、
3DoF、6DoFは、AR/VRデバイスで取得&反映できる情報の軸数(回転軸、移動軸の数)を表したものです。
自由度が回転だけの場合「3DoF」回転&移動の場合「6DoF」と表します。

少しわかりにくいので、もう少し具体的に解説していきます。

回転が反映される 3DoF

画像引用: ARの実践教科書 P. 36

3DoF(3軸)に対応したAR/VRデバイスの場合、上図のようにロール・ピッチ・ヨーの3軸の回転が反映されます。(図のぐるっとしている3つの矢印)

例えば、顔を右に向けたときに右の景色が見えるVRデバイスは、「ヨー」軸の回転が取得でき、モニターに反映されるという意味で3DoF対応のVRデバイスと言うことができます。

3DoF対応のAR/VRの例:
Oculus Go、Google CardboardのWebVRコンテンツ etc…

回転&移動が反映される 6DoF

6DoF(6軸)に対応したAR/VRデバイスの場合、3DoFの回転軸に加えて位置移動まで反映されます。

例えばユーザーがロール(x)軸の方向に位置移動したとき、その移動を取得してVR/ARのコンテンツにも反映される(近づいた分、目の前のオブジェクトが大きく表示されるなどの)場合、6DoF対応となります。

6DoF対応のAR/VRの例:
Meta Quest1, 2、WebXR Device API対応のWebAR/VR etc…

次からAR/VRデバイス(またはコンテンツ)を試すときは、3DoF、6DoFのどちらなのかもチェックしてみるといいかもしれません。

デジタルツイン

スクリーンショット引用

「デジタルツイン」とは、現実世界に存在するものをデジタル世界に複製する構想のことです。

例えば最近では、国土交通省が立ち上げた「Project PLATEAU」にて、日本の都市の3Dモデルがオープンソースとして公開されました。これは現実世界を3Dスキャンして3Dモデルというデータにする(=現実世界のものをデジタル世界に複製する)、デジタルツインの一例と言えます。
また、デジタルツインによって作られた、現実の鏡像(対)のような仮想世界のことをミラーワールドとも呼びます。

しかし、どうしてデジタルツインを作る必要があるのでしょうか?ARとどのように関わってくる構想なのでしょうか?

アメリカ版『Wired』誌初代編集長で、デジタルテクノロジーに関して数々の論考を展開する編集者のケヴィン・ケリー氏は、ミラーワールド(デジタルツイン)について「世界が機械によって認識できるようになる」世界と表現し、以下のように意義を説いています。

第1のプラットフォームであるインターネットは、世界中の情報をデジタル化し、検索可能にして答えを出せるようにしました。それこそが、われわれがいまも使っているウェブというものです。

その次の世代の大きなプラットフォームは、人間の行動や関係性を捉えて、人間同士の関係をデジタル化するというものでした。それは「ソーシャルグラフ」と呼ばれ、機械が人間関係を認識できるようにしたもので、人間関係や行動に対してAIやアルゴリズムを適用できるようになりました。第2の大きなプラットフォーム(ソーシャルメディア、SNS)の出現です。

そして、それに続く第3の大きなプラットフォームが、物理的な全世界をデジタル化したもの(ミラーワールド)です。現実の世界や関係性を検索し、それを利用して新しいものを生み出せるよう、AIやアルゴリズムを適用するものです。その優れた点は、それらを見ることができるだけでなく、対象がデジタル化されているので、機械がそれらを読めるということです。

5000日後の世界 すべてがAIと接続された「ミラーワールド」が訪れるハイテク思想家が予想する2035年の「新たな世界」
※太字編集は本記事の執筆者による

つまり、デジタルツインを作成したミラーワールドの世界では、現実世界の物理的な三次元情報まで点群や3Dモデルという形でデジタル化することより、ユーザーのみならず機械(アルゴリズム)までもが現実世界のより多くの情報にアクセスできるようになるのです。

それでは、具体的にはデジタルツインを用いることで何が実現されるのでしょうか。

一例として、都市を使ったシミュレーション/実験が挙げられます。都市空間でのシミュレーションは、計算可能な値となったデジタルツインのデータを用いることで、これまでより正確に、そして容易に実行できるようになるでしょう。

未来のポストモビリティ社会とは一方で、クルマやロボットに搭載されたカメラやセンサーによって現実がリアルタイムでスキャンされ、デジタル記述され、アルゴリズムに回収されるプロセスでもあるのだ。

#デジタルツインへようこそ :雑誌『WIRED』日本版VOL.33の発売に際して、編集長から読者の皆さんへ

これが実現した社会では、交通情報などの都市機能が即座に計算され予測できるようになるかもしれません。ARグラスが普及した未来では、例えば混雑情報などのシミュレーションが、実際に都市に配置された形でユーザーに提示されるなどのユースケースも考えられます。

もっと身近な例で言えば、わたしたちが現在スマートフォンやPCを用いて2D(画像、映像、テキスト)で閲覧している土地や建物の情報を、3Dのより正確な情報として閲覧、引用、参照などができるようになるでしょう。

以上のように、デジタルツイン/ミラーワールドは、わたしたちがアクセスできる情報の大きなパラダイムシフトを予感させる、注目すべき構想だと言えます。

まとめ

本記事ではARの情報を調べていると遭遇する専門的な語についてまとめました。

今後も、AR/VRに関係する用語や技術について、わかりやすく解説する記事を執筆していきますので、他の記事も併せてチェックしてみてくださいね。

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参考文献

ARの実践教科書 – 著: Steve Aukstakalnis、翻訳: 池田聖、酒田信親、山本豪志朗、前平謙二、笠川梢、藪田真弓、藤原誉枝子
ARの教科書 – 著: Dieter Schmalstieg、Tobias Hollerer、翻訳: 池田聖、酒田信親、山本豪志朗、一刈良介、大槻麻衣、河合紀彦、武富貴史、藤本雄一郎、森尚平