近年VR(仮想現実)の進化は著しく、エンターテイメントやプロモーション、教育や医療など、多くの業界でVR技術が活用されています。
では、VRのどのような特徴を活かし、各業界でビジネス活用がされているのでしょうか。
今回の記事では、以下の内容について解説していきます。
- VRの技術・仕組み
- ビジネス活用におけるメリット
- 各業界でのビジネス活用の事例
この記事を読むことで、自社ビジネスとVRの関係を考えるきっかけになると思います。ぜひ最後までお付き合いください。
VRとは?
VR(Virtual Reality)とは、コンピュータ技術を用いて作り出された、実際には存在しない仮想空間や環境を体験させる技術です。
この体験をするために、ユーザーは特別な装置の装着が必要です。例えばヘッドマウントディスプレイ(HMD)があげられます。これを装着することで、360度の仮想世界に没入することが可能になります。
VRはエンターテインメント、プロモーション、教育、医療、建築など多岐にわたる分野で応用されています。
- コンピュータ技術を用いて作り出された、実際には存在しない仮想空間や環境を体験させる技術
VR(仮想現実)の技術と仕組み
現在販売されているほぼすべてのVR機器は、ヘッドセットと呼ばれるゴーグルをかけ、顔の向きに合わせて映像を表示する(変化させる)技術がベースになっています。
映像の立体視は、ディスプレイの液晶を右目と左目に区切って映像を分けることで実現します。左右のレンズ配置もそれぞれの映像が見やすいようになっているなど、VRの世界に浸るための工夫が至るところに施されています。
また、多くのVRヘッドセットにレンズのピント調整機能が備わっており、高い没入感を得られるようになっています。
VRヘッドセットまたはゴーグル
VRヘッドセット(もしくはVRゴーグル)は、ユーザーの視界全体を覆い、周囲の現実世界を遮断する装置です。VRを実現するためには必須の装置です。
ヘッドセットには高解像度のディスプレイが一つまたは二つ内蔵されており、ユーザーの目の前に画像または動画を写し出します。
トラッキングシステム
VRシステムは、ユーザーの頭部や手の動きを正確に追跡するためのトラッキングシステムを使用しています。このシステムによって、ユーザーの目の前に仮想空間を映し出すことが可能となります。
また、ジャイロスコープ、加速度計、磁気センサーなどを活用し、ユーザーが頭を動かすと、仮想環境もリアルタイムで対応する方向に動くようになります。VR装置の性能や品質はこの部分で大きな差がでます。
入力デバイス
VR(仮想空間)とユーザーのインタラクションを生み出すために、コントローラー、グローブ、トレッドミルなどの入力デバイスが必要になります。
これらのデバイスはユーザーの動きやアクションを仮想環境に伝え、より没入感のある体験を実現します。
VRをビジネス上で活用することのメリット
メリット①|業務課題への解決
VR技術を活用することで、業務効率化とコスト削減を実現することができます。
業務効率化の場合、遠隔地にいるチームメンバーとの打ち合わせにVR会議を用いることで、コミュニケーションの質を向上させることができます。
製造業であれば、新製品の製造・量産に取り掛かる前に、VRを活用して製品のチェックを行い品質担保が可能になります。
安全性向上にも有効で、建築現場や医療現場での研修生に向けたトレーニングを安全に行うことが可能になります。
メリット②|新しい市場への進出が可能となる
VR技術を活用することで、従来の市場や業界の枠を超えた新しいビジネスチャンスを探求することが可能になります。
これにより、新規顧客の獲得や異なる市場を生み出す可能性を秘めています。
さらに、VRを使い、メタバース空間を作ることで、更なる没入感のある体験ができる可能性を秘めています。
ビジネス面では、実際に店舗や観光地に来れないユーザーへのリーチが可能になっています。例えば、観光業界では、VRを通じて未来の旅行客に目的地のバーチャルツアーを提供することに成功している事例が多々あります。
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メリット③|VR施策自体にプロモーション効果がある
VR技術を活用したプロモーションは、その新規性と没入感の高さにより、強い印象を消費者に与えることが可能になります。
さらに、VRのような新規の技術を取り入れた施策はメディアに取り上げられる可能性が高く、プロモーション効果を獲得しやすいのも特徴です。
VR(仮想現実)の活用事例を業界別に紹介
ビジネスにおいてどのようなメリットがあるかを理解した上で、どのような業界で、どのようなVR活用事例があるのか具体的に見ていきましょう。
観光業界でのVR活用事例
バーチャルツアー
バーチャルツアーでは、観光客が実際に現地を訪れることなく、世界中の名所や観光地をバーチャルで巡ることができます。リアルタイムのガイド付きツアーの実現も可能です。
①「須磨寺VR」
兵庫県神戸市にある須磨寺では、実際にその場を訪れているかのような体験ができるVRサービスが公式ホームページにて公開されています。実際に再生してみると、まるで自身が境内を歩いているかのような様子が再生され、360°周りの景色を楽しむことができます。音声ガイドも付いており、臨場感ある体験ができます。
②「VR世界旅行」
エース株式会社が公開しているVR体験。スマートフォンを使用するタイプのVRで、誰もが気軽に体験することができます。ユーザーが行ってみたい国を選択すると、現地の様子が再生されます。画面をスクロール操作すると、それに伴い見えている景色も変わり、まるでその場で周りを見渡しているかのような体験ができます。実際に海外へ足を運ぶとなると、時間も費用もかかりますが、VRでは気軽に現地へ行ったかのようなリアルな体験ができます。
文化遺産の保存もしくは再現
VR技術は、危機に瀕している文化遺産や、観光することが遺産運営側の都合で困難なスポットをデジタル化して公開することにも活用されています。そうすることで、遺産や伝統文化財の摩耗を防ぐことができるのです。
①「ノートルダム大聖堂」
フランス・パリにある、象徴的な建造物であるノートルダム大聖堂は、2019年の火災で大きな損傷がありました。2024年の現在でもまだ修復の途中です。しかし、火災の1か月半前に撮影されていたVRの映像を通じて、かつての姿を見ることができるのです。有名なバラの窓の美しさや、天井の高さまで感じることができます。
②「青の洞窟」
イタリア・ナポリにある世界遺産「青の洞窟」。観光地として非常に人気の高いスポットですが、天候や波、風の状況によっては訪れることが難しい場所です。しかし、VRであればそういったものからは影響を受けず、体験することができます。この動画では、実際の洞窟内部に入り、美しい海水や観光を楽しむ人々の様子をみる体験ができます。
教育業界でのVR活用事例
VRを活用した現実に近い学習体験
歴史的な出来事や科学的なプロセスをVRで体験することで、学生のより深い理解と実践的な学習が促進されます。VR空間での学習は、印象的でリアルなものであるため、より長期間に渡って記憶することができます。
①「今帰仁城を再現」
NTTドコモが実施した、4KVRコンテンツをヘッドマウントディスプレイやタブレット端末に配信して、修学旅行生や地元の中高を対象にした直観的な学習VR体験。高精細な4KVRコンテンツでは、石垣しか残っていない今帰仁城だけでなく、人々が暮らす様子や、兵士たちの迫力ある戦争の様子などが再現されます。遺跡を見ただけでは想像することのできない、専門家の研究に基づいた再現映像を、実際にその場に立って風に吹かれながら、体感することができます。
②「Google Arts&Culutureを活用した社会科授業」
アメリカ・ニューヨーク市の学校では、VRツアーアプリ「Google Arts&Culuture」を活用して、社会科授業を行っています。教科書では理解しにくい世界中の名所を再現したVR空間を体験し、没入感を持って学習できます。
リモート教育での活用
VRを利用することで、遠いところでも学校の教室にいるかのような環境を提供し、学生がどこにいても教室のような体験ができるようになります。
①「WHITE LAB」
長岡工業高等専門学校が実施しているバーチャルキャンパス。WEBブラウザから誰でも利用が可能で、様々な講義やイベントに参加することができます。全国どこからでもアクセスが可能で、仮想環境の講義室で自身が受講しているような体験ができます。
②「VRScool」
VR空間の中で教室や体育館、シアターなどの体験ができる、オンライン上の施設です。学習を楽しみながら、VR空間で授業やイベントに参加ができます。その他、職業体験などもでき、実際にその職業に従事している人の講義を受けたり、職場の現場を見たりすることができます。これらも全てVR空間にて行われます。
広告・プロモーション業界でのVR活用事例
近年、従来のデジタル広告とは異なる「VR広告」も登場しています。VR広告の特徴として、商品ディスプレイの自由度が格段に上がる点があげられます。
視聴者(ユーザー)が見ている映像に全方位型の広告を流したり、商品に触れることができます。
①「グリコ ジャイアントコーン」
グリコのアイスクリーム商品「ジャイアントコーン」のCMにVRが活用されました。VR動画の中で俳優の綾瀬はるかさんが360°の方向から3度に分けて登場するという内容です。ユーザーは登場の度に視点を変える必要があり、能動的に動画を見ます。自身で視点を変えられることから、飽きが来ず、最後まで動画を視聴するユーザーが増えるでしょう。
②「TOKYO ALEWORKS バーチャル・ブリュワリーツアー」
東京エールワークスが公開している、ビール工場見学のVR体験ができる動画です。サブスクリプションサービスの契約者特典として、対象商品ビールの製造過程をまるでその場で見学しているかのようなVR動画を配信しています。
医療におけるVRの活用
研修医師への教育
手術の様子をVRで見学可能にし、世界各国の医師と共有するという医者同士の教育・研修の手段として活用されています。
第一線の医師が執刀する手術をリアルに体験できることは、医療の道を志す学生や経験の少ない医師はもちろん、同じ分野の医師にとっても大きな学習機会となっています。
①「ワクチン注射シミュレーター」
イマクリエイト社が提供する、医療の研修用サービスです。このサービスにより、筋肉注射の手順を感覚的に習得することができます。このサービスで医学生は、施設や設備の有無にかかわらず、いつでも、何度でもトレーニングが可能になりました。
②「VR一斉再生システム」
株式会社ジャパンディスプレイが提供するこのサービスは、病院と大学キャンパスなど、離れた場所での実際の現場を想定した研修をサポートします。VRを装着した受講者全員が同時にコンテンツの視聴をすることができ、病院側と大学側双方がより効率的に研修を行うことができます。
患者への説明
ARやVR技術は、患者に病状や手術内容を説明する際にも有効です。ARやVRを用いた3Dモデルで説明することで、医学の知識がない患者でも、直感的に理解が進み安心して治療を受けられます。
「Main Maze」
こちらは脳卒中などのリハビリに応用が期待されるVR体験です。リハビリをうける患者の肘・手首・指先に装着されたセンサーで、患者の動きを把握します。画面上には様々なミッションが表示され、患者さんが次々にミッションをクリアしていく流れです。
まとめ
今回ご紹介したVRのビジネス活用におけるメリットは3つ。
- ①業務課題への解決:業務効率化とコストの削減
- ②新市場への進出:物理的距離を越えることで新規顧客を獲得
- ③VR施策自体にプロモーション効果がある:他社との差別化も実現
そして各業界でどのようにVRがビジネス活用されているのか、事例を用いながらご紹介いたしました。
- 観光業界(バーチャルツアー、文化遺産の保存もしくは再現)
- 教育業界(VRを活用した現実に近い学習体験、リモート教育)
- 広告・プロモーション業界(VR広告配信、PRイベント)
- 医療業界(研修医師への教育、患者への説明)
また、VRやARを使ったマーケティングの成功事例を参考にする場合、「どういった目的で、どんな技術を、どのように扱うか」を精緻に把握することがとても重要です。
単純に「あの企業がやっているから、自社もできる、上手くいく」という思考では上手くいきません。目的や体制、技術に関する知見が異なるため、表面的に施策を真似ても効果は期待できない場合が多いです。
今回ご紹介した内容が自社に活かせるエッセンスがあるかどうかを見つけ、目的に対してどのようにすれば成果が上がるか考えることが、ARを使った施策においての成功に近づけます。
ぜひ、事例を有効活用し、ARの施策の実行・改善にお役立てください。