今話題のVPSとは?関連サービスも合わせて解説!

最近AR業界でよく話題に上がるものの中に、VPS(ビジュアル ポジショニング システム)という言葉があります。
本記事ではVPSの解説と、VPSを提供するサービスをご紹介します!

VPSとは?

VPSは、画像認識の技術等を用いて現実世界の位置合わせを行うことにより、端末がある場所や向きを特定する技術のことです。ARで話題になっている技術ですが、自動運転などでも使用されている、応用範囲の広い技術です。

VPSではあらかじめ用意しておいた3Dマップ情報と、カメラで取得した特徴点の情報をもとに、位置合わせを行います。位置合わせに時間がかかる場合がありますが、誤差を数cmに抑えることができるため、ARのオブジェクトを正確な位置に出現させることが可能です。

引用元:https://nianticlabs.com/blog/lightshipsummit/?hl=ja

デメリットとしては3Dマップの用意が大変なことが挙げられます。従来は開発者がARを表示したい場所をあらかじめスキャンし、データを用意する必要がありました。これでは物理的に遠い場所や複数箇所のスキャンが必要な場合などでは手間がかかります。
また、あまりに広い範囲をスキャンする場合はデータ量が膨大になってしまいます。
一部の企業では蓄積した膨大なデータをもとに、あらかじめ3Dマップを用意している事例が出ており、VPSの盛り上がりの一因となっています。

GPS

位置を特定する技術としてよく知られているのがGPS(グローバル・ポジショニング・システム)です。こちらは複数の人工衛星からの信号を受け取り、その情報をもとに現在位置を推定する方法です。
比較的簡単に位置を取得することが可能ですが、GPSは数mの誤差が生じるとされています。また、GPSだけで端末の向きを判断することは困難です。これではARを表示するためには精度が足りない場合が多く、今まで開発者を悩ませていました。

AR業界でよく取られる手法として、GPSで大まかな位置を取得し、VPSで周囲の3Dマップデータからより正確な位置合わせを行う事で、双方のデメリットを打ち消しています。

VPSを実現しているサービス

VPSを実現するサービスは多くあります。順番に見ていきましょう。

Geospatial API(Google)

対象範囲:GoogleMapのストリートビューが表示できる全ての場所

VPSの対象範囲として圧倒的な広さを持つのがGeospatial APIです。
Google Mapの機能として「Live View」という実際の景色に合わせて案内をしてくれる機能がありますが、そこで使用されているものをAPIとして解放したものになります。
通りに面した場所ではスキャンなしで正確な表示が可能ですが、公園の中などストリートビューで表示できない場所では少し正確性に欠けるという特徴があります。

Location Anchors(Apple)

対象範囲:アメリカ全土、ロンドン、シンガポールなど主要な都市。日本では福岡、広島、大阪、京都、名古屋、横浜、東京。

AppleはVPSの技術は早くから出していましたが、対象範囲が狭く日本ではあまり話題になっていませんでした。しかし、先日のWWDCで日本を含め、世界的に対象範囲を拡大しています。

Lightship VPS(Niantic)

対象範囲:サンフランシスコ、ロサンゼルス、シアトル、ニューヨーク、ロンドン、東京などを含む30,000以上のロケーション。筆者調べでは大阪や名古屋にもロケーションあり。(範囲外では自分でスキャンすることで追加可能)

ポケモンGOなどでユーザーから提供されたデータを組み合わせてVPSで使用できるようにしています。ユーザー人口が多い場所で公園のオブジェや特徴のあるモニュメントなどが多く登録されています。
対象にない場所は自分でスキャンし、地点として登録することができます。

また、WebARのライブラリである8th Wallに対応することも公表されています。実現すればWebARにおいてVPSができる強力な選択肢となるでしょう。

City Landmarker Template(Snap)

対象範囲:ロンドン(範囲外では自分でスキャンすることで追加可能)

スキャンデータを見ながらオブジェクトの表示位置などを決めることができ、SnapChat上で機能を楽しむことができます。

引用元:https://docs.snap.com/lens-studio/references/templates/landmarker/city-landmarker#location-mesh-visual-controller

対象にない場所は自分でスキャンし、地点として登録することができます。

リアルメタバースプラットフォーム(Psychic VR Lab)

対象範囲:東京・大阪・名古屋・札幌・福岡・京都の6都市

同社の提供するサービス「STYLY Studio」上で提供されているようです。国内のキャンペーンなどでも利用されています。

Pretia(プレティア・テクノロジーズ)

対象範囲:なし(自分でスキャンする事で追加が可能)

範囲としてあらかじめ用意されている場所はなく、自分でスキャンをする必要があります。スキャン→確認→登録の流れはスムーズに行うことができますし、組織間でのマップの共有も可能です。
Geospatial APIやLightship VPSで対象外の地点でVPSを行う場合や、集団でマップを使う場合に使用すると良いでしょう。
また、プレティア・テクノロジーズは日本の会社のため、ドキュメントが日本語であることも特徴です。

まとめ

VPSの概要と、それを実現するサービスをご紹介しました。VPSを利用したゲームやアプリは少なく、今後の広がりが期待できます。
一方でGeospatial API以外で対象範囲は都市部にとどまっており、気軽に利用するためにはまだ拡大していく必要があります。
ARグラスの普及に向けてVPSの技術はさらに成熟していくでしょう。今後も目が離せません。