現地時間で5/24に行われている、Niantic Lightship Summitにて、「Lightship VPS」という新しいサービスの発表がありました。本記事ではその内容について、解説していきます。
Lightship VPSとは?
VPSとは「ビジュアル ポジショニング システム」のことで、画像認識の技術を用いて現実世界の位置合わせを行うことにより、端末がある場所や向きを特定する技術のことです。
最近AR業界ではこの技術の発表が相次いでおり、日本ではSTYLYやPretia、海外ではSnapやGoogleなどがプレイヤーとして存在します。
特に今月に行われたGoogle I/Oでは、ストリートビューができる全ての国で事前にスキャンすることなく、VPSが使用できるということで話題になりました。
Nianticでも同様にVPSの機能を発表した形になります。
発表時点では6都市(サンフランシスコ、ロサンゼルス、シアトル、ニューヨーク、ロンドン、東京)の30,000以上のロケーションで使用が可能とのことです。また、ロケーションの範囲は直径10mほどとのこと。
Lightship VPSで注目したいのは大きく二点です。
・8th Wallでも利用可能であること
・街並みではなく、目印となるモニュメントや建物を基準にすること(GoogleのGeospatial APIと使い方が異なること)
それでは、順番にみていきましょう。
8th Wallでも利用可能
8th Wallは2022年の3月にNianticに買収された、WebARの主要プレイヤーの一つです。
元々WebARとは思えない精度や機能を持っていた8th Wallですが、ついにVPSの機能も搭載することとなりました。
さらに、8th Wallの料金プランも見直しが行われ、$9.99/月で使用できるスタータープランが誕生しました。
今までは個人開発者にとって、料金が高く使いにくいイメージがあった8th Wallですが、このプランが誕生したことにより、より気軽に開発をおなうことができます。
WebARではアプリ以上に位置の推定が困難であり、手が出しにくい分野の一つでした。今回の発表載によりWebAR界隈がさらに盛り上がることでしょう。
GoogleのGeospatial APIとの違い
他社サービスとの違いはなんでしょうか。
本記事ではGeospatial APIとの違いについて考察します。
Geospatial APIの特徴
Googleは、GoogleMapやストリートビューに使用する膨大な地理データを保持しています。Geospatial APIはこの地理データを誰でも使えるように解放したものです。
そのため、GoogleMapにある場所は非常に精度が良い反面、GoogleMapでみられない場所(建物の中、道路から離れた公園の中心)などでは精度が落ちてしまいます。
Lightship VPSの特徴
Nianticは、自前でもデータを集めているようですが、それ以上に「ポケモンGO」などでユーザーから集めたモニュメントや写真のデータを長年蓄積しています。
そのため、Geospatial APIのように街並みではなく、目印となるモニュメントや建物を基準にすることで位置の推定を行なっていくようです。
発表の際にも、モニュメントをスキャンする様子がみてとれます。
そのため進行方向の案内などの広範囲に及ぶARではなく、特定の場所でのアクティビティなどのAR体験に適していると考えられます。
また、開発者がARを表示したい場所にデータがない場合、自分でスキャンしてアップロードすることで、さらにデータを増やすことが可能なようです。
ユーザーと共にデータを作っていくNianticらしい方法です。
まとめ
講演内容はNianticの日本語ブログでも詳細が発表されています。
Lightship VPSの他にもマップを起点とするSNS「Campfire」や、Niantic Venturesによる資金提供先の発表が記載されています。
https://nianticlabs.com/blog/lightshipsummit/?hl=ja
必要とされている技術が一通り出揃ってきたことで非常に盛り上がっているAR業界ですが、6月頭にはAppleの発表会であるWWDCも控えています。
ARグラスが発表される可能性は低いですが、VPSのような技術を出すのか、別の方向性をいくのか注目です。