Apple Vision Proとは?初心者にもわかりやすくご紹介

2024年6月28日、日本でも発売開始された「Apple Vision Pro」。

日本でも人気の高いAppleが出す新製品であること、約60万円と高額であることなどで話題にはなっているものの、「どんなデバイスかよくわからない……」という方も多いのではないでしょうか。

本記事では「Apple Vision Pro」とは何か、概要や特徴などについて、技術的な知識がない方にもわかりやすいようご紹介します。

プライベートで使ってみたい個人の方も、ビジネスで活用したい法人の方もぜひ参考にしてください。

Apple Vision Proの概要

Apple Vision Proとは、2023年6月にApple社が発表・2024年2月に発売開始した、史上初の「空間コンピューティングデバイス」です。

従来のディスプレイのような平面的なインターフェースではなく、三次元の空間そのものをインターフェースとして利用するデバイスです。

見た目はゴーグルのような目を覆う形で、MicrosoftのHoloLens、MetaのMeta QuestなどのVRヘッドセット/ゴーグルに近しい形状ですが、Appleは「空間コンピューティングデバイス」という呼称を使用しており、これまでにない革新的なデバイスであることを提唱しています。

価格・発売日

Appleの公式サイトおよび公式ショップで購入でき、最低価格は日本円で59万9800円(256GBモデル)となっています。(2024年8月1日現在)

6月13日に中国本土や香港、日本、シンガポールでの予約注文が開始され、28日からはオーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、イギリスでも予約注文が可能になりました。

これらの国々では7月12日(現地時間)に発売が開始されました。

「空間コンピュータ/コンピューティング」とは

空間コンピュータ/コンピューティングは、現実世界とデジタル世界を融合させた新しいコンピューティングの概念です。

2023年6月にアップルの開発者会議「WWDC 2023」でApple Vision Proが発表され、Apple CEOのティム・クックがApple Vision Proを「空間コンピュータ」と呼びました。

従来のコンピュータ(パソコン)はディスプレイやキーボードなどの平面的なインターフェースを使用していましたが、空間コンピュータでは、三次元の空間そのものをインターフェースとして利用します。

例えばアプリを開いてドキュメントを作成したり、設計図やイラストを制作するといった作業を、机の上だけではなく、目の前に広がる空間全体を使って行うことができるようになります。

ビジネス用途だけではなく、友人と通話・Web会議したり、1人で映画を見たりといったプライベートな用途でも、画面の幅に制限なく空間全体を使って行うことができます。

Apple CEOのティム・クックが「今日は、コンピュータの歴史にとって新たな時代の幕開けとなる記念すべき日となるでしょう。Macが私たちにパーソナルコンピューティングをもたらし、iPhoneがモバイルコンピューティングを実現したように、Apple Vision Proは私たちを空間コンピューティングの世界へと導きます。」と述べたように、Apple Vision Proは世界に「空間コンピューティング」という概念を提唱する革新的なデバイスとなっています。

引用元:https://www.apple.com/jp/newsroom/2023/06/introducing-apple-vision-pro/

Apple Vision Pro 発売までの経緯

Apple Vision Proは2023年6月にアップルの開発者会議「WWDC 2023」後半で久しぶりの「One more thing…」として発表されました。

「One more thing…」とはAppleが新しいプロダクト、もしくは大きな進化を発表する際に利用しているフレーズです。

2020年のApple M1を初めて搭載した新型Macの発表から3年ぶりの「One more thing…」となったことからも、重要度の高いプロダクトであることがうかがえます。

WWDC23では3次元のインターフェース、指先や視線で直感的な操作ができること、「EyeSight」など革新的な機能とともに、3,499ドル(約50万円)という高額な販売価格でも注目を集めました。 AppleがVR/AR市場に参入するという噂は2023年以前からあったものの、2016年にHoloLensを発売したMicrosoftや、2019年にOculus Questを発売したMeta(旧称Facebook)に比べると後発の参入となっています。

Apple Vision Proの特徴

特徴①圧倒的な没入感、シームレスな体験ができる

Apple Vision Proの最大の特徴は、なんといっても圧倒的な没入感を得られることです。 これまで他のデバイスでは再現できなかった「その場にいるような感覚」を、高い精度で再現することができるデバイスとなっています。

「約60万円は高すぎるし、他のデバイスでも良いのではないか」という疑問を持つ方も多いかと思いますが、実際に装着して没入感を体験すると違いがわかるかと思います。

他デバイスとの違いを理解するためには、一度実際に体験してみることをおすすめします。(Apple Storeで体験が可能です)

すぐに体験には行けない……という方は、こちらのAppleの発表動画を見るだけでもイメージがつくかと思います。

圧倒的な没入感を実現する技術

圧倒的な没入感は3Dディスプレイと高精度なカメラ、センサーによって実現されています。 高精度なカメラが外部の環境を捉え、仮想世界と現実世界を融合させるための高精細な映像を取得し、高精度なセンサーによってその場にいるような感覚を得ることができます。

■搭載されたカメラ・センサー

  • 2つの高解像度メインカメラ
  • 6つのワールドフェイシングトラッキングカメラ
  • 4つのアイトラッキングカメラ
  • TrueDepthカメラ
  • LiDARスキャナ
  • 4つの慣性計測装置(IMU)
  • フリッカーセンサー
  • 環境光センサー

特徴②高い処理能力と鮮明な映像表現

他デバイスとの違いとしてApple社が独自開発した高性能チップ「M2」を搭載しており、従来のMRデバイスよりも圧倒的に高い処理能力を実現している点も挙げられます。

具体的には、以下の点が向上しています。

  • CPU性能: 前世代のM1チップと比べて18%向上
  • GPU性能: 前世代のM1チップと比べて34%向上

エフェクトを重ねた音楽制作や、写真に複雑なフィルタを適用するなど、CPUに負荷のかかるタスクをごくわずかな電力で処理できるようになっています。

空間全体がディスプレイになり、表示領域が広がったことや、3D映像による奥行きのある表現ができるようになったことで、表示可能なグラフィックの容量も大きくなりますが、それでも問題なく動作するような高い処理能力を持ったデバイスとなっています。

詳細:https://www.apple.com/jp/newsroom/2022/06/apple-unveils-m2-with-breakthrough-performance-and-capabilities/

特徴③直感的な操作性

VRゴーグル・MRデバイスには手に持ったコントローラーを使って操作するもの、手や音声、視線などを認識して操作するものなどがあります。 Apple Vision Proは手や指の動きを検知するカメラを搭載しており、コントローラーなしで直感的に操作することができます。

他のVRゴーグル・MRデバイスでもコントローラーなしで操作できるものもありますが、Apple Vision Proは操作性の高さで他のデバイスと一線を画しています。

直感的な操作性はトラッキングの精度の高さと応答性の良さにより実現されています。 Apple Vision Proは操作を始める前に「キャリブレーション(Calibration)」という設定が必要になります。

「キャリブレーション(Calibration)」とは一般的に「調整」「較正」という意味で、Apple Vision Proではアイトラッキングを正確に行うために目の特徴に合わせて視点のブレなどが起きないよう調整することを指します。

この設定により、少しの視線の動きも高精度に捉え、スムーズな操作性を実現します。

Apple Vision Proの機能

Apple Vision Proには独自の機能がいくつか搭載されています。その中でも特徴的な機能についてご紹介します。

機能①空間ビデオ

空間ビデオとは、従来の2Dビデオとは異なり、3Dの情報を含んだ立体的な映像を記録できる新しい映像形態です。

撮影した映像をApple Vision Proで視聴することで、まるでその場にいるような臨場感で、撮影した風景や人物をよりリアルに体験することができます。

Apple Vision Proの発売に先んじて、iOS 17.2以降、iPhone 15 ProとiPhone 15 Pro Maxのユーザーは空間ビデオを撮影できるようになりました。 Apple Vision Proでも空間ビデオを撮影することができます。

参考:https://www.apple.com/jp/newsroom/2023/12/apple-introduces-spatial-video-capture-on-iphone-15-pro/

機能②FaceTimeが空間体験に対応

iPhoneやMacで利用できるFaceTimeは、Apple Vision Proでは空間上で体験できるようになりました。

空間全体に通話への参加者を映し出し、空間オーディオによりそれらの人物が見えている位置から直接話しかけているかのように音声を再現することで、その場に参加者がいるかのような通話が行えます。

機能③Persona

「Persona」は先進的な機械学習テクノロジーにより生み出される3Dアバターで、ユーザー自身の姿、顔や手の動きをリアルタイムで再現します。

PersonaはApple Vision Proを使って収録し、FaceTimeのほか、Persona仮想カメラを使ってPersonaを表示する別のアプリでも使用できます。

Apple Vision Proを所持している人同士であれば、FaceTime通話中に空間にPersonaを表示し、空間オーディオによりそれらの人物が見えている位置から直接話しかけているかのように音声を再現することで、その場に参加者がいるかのような通話が行えます。

PersonaはApple Vision Proを使って収録し、FaceTimeのほか、Persona仮想カメラを使ってPersonaを表示する別のアプリでも使用できます。

▼Personaを収録する様子

機能④SharePlay

SharePlayはAppleのデバイスで、FaceTimeでの通話中に、映画、テレビ番組、音楽などを一緒に楽しめる機能です。

iPhone、iPad、Macなどにも搭載されており、Apple Vision Proにも引き続き搭載されました。 Apple Vision Proではほかの人と一緒に映像を視聴したり、写真を見たり、プレゼンテーションに共同で取り組むこともできるため、ビジネスでの活用も期待されます。

機能⑤EyeSight

ゴーグル上のデバイスをかけている際、通常は顔が覆われてしまうため、外から目元の表情を見ることができません。

「EyeSight」と呼ばれる機能では装着者の様子を外部ディスプレイに投影することで、何をしているかを把握することが可能です。

画像では少しわかりにくいですが、上記の画像でもぼんやりと目元が浮かんでいるのが見て取れるとか思います。 誰かが近くにきたときは、ディスプレイに相手の姿が映ると同時に、相手にも装着者の顔が映ることでコミュニケーションを取りやすくします。 装着者の姿は事前に登録を行います。

Apple Vision Proで顔をスキャンすることで、自分のデジタルアバターを作成し、外部ディスプレイに投影します。

他社デバイスとの違い

Apple Vision Proは革新的なデバイスではありますが、他社デバイスと具体的に何が違うのかわからないという方も多いかと思います。 本記事では価格帯の近いMicrosoft HoloLens、低価格で利用者も多いMeta Questと比較してご紹介します。

Microsoft HoloLens

概要

Microsoft HoloLensは、マイクロソフトが開発・販売する複合現実(MR)デバイスです。 MRとは、現実世界と仮想世界を融合させた空間を指します。

初代HoloLensは2016年に発売され、2019年にHoloLens 2が発売されました。 MicrosoftはHoloLens 2を「自己完結型ホログラフィックデバイス」と呼称しています。

「自己完結型」とは、単独で動作し、外部のコンピュータに接続する必要がないことを意味します。

HoloLensは、内蔵されたプロセッサやバッテリーによって、ホログラムの生成や表示に必要な処理をすべて自身で行うことができます。そのため、場所を選ばずにどこでも利用できるというメリットがあります。

主な特徴

  • 高精細なホログラム投影 : 現実世界に溶け込むような高精細なホログラムを投影できます。
  • ハンドジェスチャー : 手の動きや音声で操作できます。
  • 空間認識 : 周囲の環境を認識し、それに応じたホログラム表示が可能です。
  • スタンドアロン型 : ケーブルや外部機器接続不要で、単体で使用できます。

 HoloLens 2の価格は、42万2,180円、HoloLens 2 Industrial Editionは、57万1,780円となっており、Apple Vision Pro同様かなり高額になっています。(2024年8月1日現在)

シースルー(現実世界の視界を遮ることなく、デジタル情報を重ね合わせる表示方式)であるものの、ハンドトラッキングとアイトラッキングを搭載しているため使用感も似ています。 Apple Vision Pro同様、空間にTeamsの画面やWord、Excelなどのホログラフィック ウィンドウを並べて操作することもできます。

Apple Vision Proとの違い

Apple Vision Proでは、Hololens2発売当時の性能や環境的に難しかった、マルチディスプレイや解像度の高い表示が可能となります。

Apple Vision Proのディスプレイが片目あたり3800×3000(4Kテレビ以上)なのに対し、HoloLens 2は片目あたり2Kとなっています。

現実世界のような高解像度の映像により、その場にいるような体験ができるのはApple Vision Proとなっています。

また、HoloLensはWebサイトから見ても主に製造、医療従事者、教育者などのエンタープライズ向けに作られており、日常的に使用することはメインでは想定されていないことが伺えます。

参考:https://www.microsoft.com/ja-jp/hololens/hardware

より高い没入感のある体験をしたい場合や、映画やゲームを楽しむ、友人とコミュニケーションを取るなどプライベートな目的でも使用したい場合はApple Vision Proが適しているといえます。

Meta Quest 

概要

Meta Quest とは、Metaが開発・販売するMR(複合現実)デバイスです。高画質・高フレームレートの映像と、自然な操作性で、まるで現実世界にいるような没入感のあるVR体験を楽しめます。 2020年10月に初代モデル「Oculus Quest」が発売され、2023年10月には最新モデル「Meta Quest 3」が発売されました。 ビジネス向けとしては「Meta Quest Pro」も発売されています。

主な特徴

  • スタンドアロン型 : PCやスマートフォンなどの外部機器を接続する必要がなく、単体でVR体験を楽しめます。
  • コントローラーで操作:付属のコントローラーで操作を行います。
  • 6DoF(6自由度)トラッキング : 頭部と手の動きをトラッキングし、より自然な操作と没入感のあるVR体験を実現します。
  • 豊富なコンテンツ : ゲーム、フィットネス、映画、ソーシャルなど、様々なジャンルのVRコンテンツが楽しめます。

Apple Vision Proとの違い

Apple Vision Proは59万9800円、Meta Quest 3は7万4,800円〜、Meta Quest Proは15万9,500円〜(2024年8月1日現在)と価格帯が全く異なります。 価格に比例して、ディスプレイなどの解像度など性能もApple Vision Proが格段に高くなっています。

また操作性もMeta Quest 3、Meta Quest Proは基本的にコントローラーが必要なのに対し、Apple Vision Proは手や視線で直感的に操作することができます。

ミーティングを行うアバターも、Apple Vision ProのPersonaのリアルな質感に比べるとかなりキャラクター的に感じられます。

Meta QuestはApple Vision Proに比べると安価で手軽に入手しやすいデバイスではありますが、その分使用場面によっては体験や性能の面で物足りなく感じる部分もあると思われます。

参考:https://www.meta.com/jp/quest/quest-3/

他社デバイスとの違いまとめ

他社のデバイスでも現実世界とデジタル世界を重ね合わせた表現が可能ですが、Apple Vision Proは処理能力/センサー/映像・音響などすべてが格段に高く、よりシームレスで没入感のある表現が可能になります。

他社デバイスが適しているケースもありますが、Apple Vision Proが適しているケースであれば、高いコストに見合った体験価値・成果が得られるでしょう。

まとめ

Apple Vision Proは「空間コンピューティングデバイス」を初めて提唱し、シームレスで没入感のある体験ができる革新的なデバイスです。

Apple Vision Proの登場により、「空間コンピューティング」という考えが広まり、プライベートな場面でも、ビジネスの場面でも、コミュニケーションの取り方、コンテンツの楽しみ方、作業の仕方などが変わっていくことが想定されます。

社会全体、未来を変えていく可能性のあるデバイスであるApple Vision Proについて、少しでも理解を深めていただけたら幸いです。

お役立ち資料

Apple Vision Proの概要、ビジネスに活用するメリットなどについてまとめた資料をご用意しました。 Apple Vision Proについて、より理解を深めたい方は以下よりダウンロードください。

palanについて

本メディアの運営企業である株式会社palanでは、2024年2月のApple Vision Proの発売以前から、国内でもいち早く調査・開発を続けています。

自分で作成したコンテンツをApple Vision Proでも体験できる「palanAR for Vision」をはじめ、Apple Vision Pro対応アプリの開発も行なっています。

palanAR for Vision :https://palan.co.jp/news/apple_vision_pro_taiou

Apple Vision Pro対応コンテンツ・新規事業開発 : https://studio.palanar.com/palanar-vision-studio

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お問い合わせ先:https://studio.palanar.com/contact  

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