Metaより発表された新デバイス「Quest Pro」。すでにさまざまな比較やレビューがありますが、その多くはVRの観点や、Pico4との比較が多い印象です。
本メディアでは主にARやMRの観点、そしてQuest2と何が異なるのかといった点からレビューをしていきます。
抑えておきたいQuest Proの特徴
まず念頭におきたいのは、Quest Proの方向性です。
Meta Connectではエンタープライズ向けとして、ビジネスでの利用シーンやMRを用いたコラボレーションを強調していました。
強化されている機能を見ても、VRヘッドセットの進化版というよりは、Quest2が持っているVRの機能に加えてMRの機能を追加した、新しいMRヘッドセットと考えた方が自然です。
そのため、ゲームなどの一般に想定される用途は値段ほどの進化はない可能性があります。(Quest2に比べ重量バランスや描画の点などは改善されているため、基本的な体験は向上しています。)
Meta Connectの内容はこちらをご覧ください。
注目の点は?
発表されていた内容は多々ありますが、注目したいのは3つ。
パススルー、表情のトラッキング、そしてスタイラスペンを用いた表現の強化です。
パススルー
Quest2ではモノクロだったパススルーですが、Quest Proではカラーになっています。これによりMR体験が向上することは間違いなく、変化を追っていきます。
表情のトラッキング
Quest Proではヘッドセットの内側にカメラがついており、表情を検知することが可能です。どの程度の精度なのか、アバターはどう映るのかをみていきます。
スタイラスペン
Quest Proではコントローラーの後ろにペン先をつけることが可能です。
これにより、スムーズに文字や絵を描いたり、3Dを描いたりすることができるはずです。
実機レビュー!
基本動作
つけ心地は良好です。Quest2をつけた時のような、ずり落ちそうな感じはありません。
デバイスを額で支える形となるため、デバイスと額との間に髪の毛が入ると滑りやすくなってしまうのが欠点でした。
うまくつけることができれば、安定した作業が可能です。
また、Quest Proの機能としてポジションフィッティングがあり、利用すると適切な装着位置を案内してくれます。
装着位置がずれると画面が見にくくなる事もあるので、活用すると良いでしょう。
前方にスペースがあるため、(厚みのあるフレームでなければ)メガネをかけていても到着が可能です。ただし、付属のカバーをつけた場合は、スペースが狭くなってしまうため注意が必要です。
コントローラーも上部の輪がなくなり、スリムになりました。
コントローラー自体が位置をトラッキングしているため、頭の後ろや背中などに持っていってもトラッキングが外れにくくなりましたし、それぞれの動作の反応が早い印象です。
また、充電ドックが付属されたことにより、それぞれの充電がスムーズになりました。これで「使おうと思ったら充電がない」と言った不便さも解消されました。
カラーパススルー
パススルーはカラーとなっている分ものの視認がしやすく、ヘッドセットを被った状態で普通に部屋を歩き回ることができました。ものを掴んだりする動作に関しても距離感が狂うことなく、自然に行うことが可能です。
ヘッドセットの隙間から見える現実世界と、パススルーで見る世界の齟齬も感じられず、非常に自然な印象です。
Quest2よりも視認性が向上していることもあり、解像度の面もそこまで気になるものではありません。とはいえ、よく注意してみるとドットが目に入ります。
ただし、パススルーで文字を読むのは困難でした。お菓子のパッケージ程度の大きさの文字は問題なく読めますが、それより小さい文字は読みづらく、裏面の成分表示は困難でした。
液晶に表示されたものも視認が困難です。
テレビなどの液晶画面をスマートフォンで動画撮影するとチラつきが起こりますが、Quest Proで見た時も同じような現象が見られます。
また、Quest2でも体験した「The World Beyond」も試してみました。
こういった体験中は現実世界の解像度は気にならず、部屋を歩き回りながら探索に集中することができました。
Quest2の場合は背景がモノクロの中で、カラーの世界が現れる表現が新しいものとなっていましたが、Proの場合はごく自然にバーチャルの世界が拡張されていった印象です。どちらも甲乙つけがたい体験でした。
表情のトラッキング
表情のトラッキングはよくできている印象です。
Horizon Workroomsで試してみましたが、表示されているアバターの表情と、自分がしている表情の間には、特に違和感がありませんでした。アイトラッキングもきちんと反映されています。
スタイラスペン
スタイラスペンは意外と書き心地よく、文字は普通にかくことができました。書ける太さはサインぺんやマーカーのようなイメージです。
ホワイトボードなどの描画フィールド内でペンを滑らせると、バネのようなフィードバックがありました。
他のARデバイスとの違い
最も大きな違いはARの描画範囲です。Hololens2やNreal Airといった透過型のARグラスでは現実世界をそのまま見ることができる反面、ARを描画できる範囲が狭く、ほぼ正面のみとなっています。
ARで大きなものを出そうとすると描画が切れてしまうこともよくありました。
Quest Proはビデオパススルー型であり、現実世界を画面を通してみることになります。見えている範囲全てに描画できるため、そういったことがありません。
また、Quest2のアプリと互換性があることや、MetaとMicrosoftが提携したことにより、コンテンツ面でも非常に有力です。Hololens2の後継になれる可能性は大いにあるでしょう。
まとめ
MRの方向性に大きく舵を切ったQuest Proですが、VRではなくMRとしてみるとポテンシャルの高いデバイスです。
パススルーの解像度や持続時間など、後一歩のところはあるものの、Quest2のように長期的なアップデートを重ねていくことで解消する部分も多いでしょう。
本メディアでは他にも様々なデバイスのレビューやまとめをしています。合わせてご覧ください。