ARとは?ビジネスに活用した7つの事例と導入ポイントを簡単に解説

AR(拡張現実)という言葉は聞いたことがあるけれど、具体的に何ができるのか、ビジネスにどう活かせるのか、よくわからない方も多いのではないでしょうか?

ARは、スマートフォンやタブレットなどのデバイスを通じて、現実世界にデジタル情報を重ね合わせる技術です。エンターテイメント分野での活用が目立ちますが、実はビジネスシーンでも幅広い可能性を秘めています。

例えば、商品の魅力をより分かりやすく伝えたり、顧客体験を向上させたり、業務効率化を図ったりと、様々な場面で効果を発揮します。

この記事では、ARの基本的な仕組みから、ビジネスにおける具体的な活用事例、そしてAR導入を成功させるためのポイントまで、分かりやすく解説します。

▼この記事でわかる内容

  • ARの概要
  • ARをビジネスで注目されている理由
  • ARをビジネスに活用した事例
  • ARをビジネスに上手く導入するためのポイント

Table of Contents

ARとは?

ARは「Augmented Reality」の略称で、日本語では「拡張現実」を意味しますこれは、現実世界に仮想的な視覚情報を重ね合わせることで、ユーザーに没入感のある体験を提供する革新的な技術です。

没入感のある体験や双方向性といった特徴を持ち、エンターテイメント、マーケティング、教育など、様々な分野で活用されています。今後もARの進化が期待され、私たちの生活に大きな変化をもたらすことが期待されています。

ARの市場規模

まずは国内市場の数字を見てみましょう。2020年時点のデータですと2030年時点でのAR/VR表示機器の世界市場は、16兆1,711億円(44.8倍)に達する見込みです。(2019年比)

引用元;『AR/VR関連市場の将来展望 2020』まとまる(2020/8/21発表 第20088号)

主に、スマートグラス、ヘッドマウントディスプレイが市場規模の拡大をけん引しています。

それでは続いて海外での市場規模予測を見ていきましょう。

AR/VR市場の規模は、2024年に424億8,000万米ドルと推定されています。さらに2029年までに2,483億8,000万米ドルに到達すると予測されており、予測期間(2024年〜2029年)中に42.36%のCAGR(年平均成長率)で成長していく予測です。

引用元:米国の小売業界で普及する拡張現実(AR)の動向|JETRO

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AR/VR技術の市場規模|将来性と今後の展望について解説。

ARはVRやMRとどのように違う?

AR(拡張現実)は、現実世界に仮想のオブジェクトを重ねて表示する技術で、スマホやタブレット、AR専用グラスなどを使い、現実世界を認識しながらデジタル情報を受け取れます。

一方、VR(仮想現実)は、専用のVRゴーグルを使い、完全に仮想の環境を作り出し、現実世界とは切り離された空間で仮想体験を提供します。

MR(複合現実)は、ARとVRを融合させた技術で、現実世界と仮想世界がリンクします。例えば、MRデバイスを使って家具を配置するアプリでは、現実の部屋の中で仮想の家具を動かすことができ、まるで実際に家具が存在するかのように配置できます。

技術 説明 デバイス
AR(拡張現実) 現実世界に仮想のオブジェクトを重ねて表示する技術 スマホ、タブレット、AR専用グラス
VR(仮想現実) 完全に仮想の環境を作り出し、ユーザーを没入させる技術 VRゴーグル
MR(複合現実) 現実世界と仮想世界を融合させた技術 MRデバイス

ARをビジネスに取り入れるメリット

ARをビジネスに取り入れるメリットとして、主に以下の3点が挙げられます。

▼ARをビジネスに取り入れるメリット

  • メリット①|現実空間において、非日常性を追加しエンタメ要素を入れられる
  • メリット②|特殊な環境を再現できる
  • メリット③|ユーザーにとって便利になる

それぞれのメリットについて詳細に解説していきます。

メリット①|現実空間において、非日常性を追加しエンタメ要素を入れられる

ARは、現実世界にバーチャルなオブジェクトや情報を重ね合わせることで、観光スポット、ショッピング、ゲーム、イベントなど、様々な場面で非日常的な体験を提供できます。

ARを活用することで、エンターテインメント性を高め、顧客満足度向上や売上アップに繋げることが期待できます。

メリット②|特殊な環境を再現できる

ARは、現実では体験できない特殊な環境を再現できる技術です。

例えば、建築・建設、製造業、教育などの業界で活用されています。ARを活用することで、新人社員に製造現場や建築現場の危険な作業などを遠隔で擬似体験させることができ、安全な教育環境を提供できます。

メリット③|ユーザーにとって便利になる

ARは、ユーザーに役立つ情報を提供し、利便性を向上させることができます。例えば、道案内、メンテナンス、防災・減災、ショッピングなどの場面で活用されています。ARは、現実世界に情報を重ねて表示することで、ユーザーが必要な情報を必要な時に、分かりやすく提供できる技術です。

ARがビジネスで注目されている3つの理由

なぜビジネスでのAR活用が進んでいるのでしょうか?それは以下の3つの観点から説明することができます。

▼ARが最近ビジネスで注目されている3つの理由

  • 理由①|海外の大手IT企業がAR分野に進出しているから
  • 理由②|ゲーム以外の活用場面が増加しているから
  • 理由③|ブラウザ上でAR体験ができるようになったから

それぞれ詳細に解説していきます。

理由①|海外の大手IT企業がAR分野に進出しているから

Apple社やGoogle社など、世界的なテック企業がAR分野に力を入れています。

Googleは、ARCoreという開発プラットフォームを提供し、開発者がAndroidデバイスでAR体験を簡単に作成できるようにしています。また、Googleレンズでは、カメラで捉えた物体を認識し、関連情報を表示する機能を提供しています。

一方、Apple社は、ARKitという開発プラットフォームを提供し、iPhoneやiPadで高品質なAR体験を開発できるようにしています。

これらの企業の取り組みは、AR技術が私たちの生活に浸透し、より便利で豊かな体験をもたらす未来を示唆しています。

理由②|ゲーム以外の活用場面が増加しているから

AR技術が広く知られるようになったきっかけの一つは、2016年にリリースされたスマートフォンゲーム「ポケモンGO」の大ヒットです。現在では、AR技術はゲームの枠を超え、様々な分野で活用されています。

例えば、美容業界では、ARを使ってメイクやヘアスタイルを仮想的に試せるアプリが登場しています。

医療分野では、AR技術を用いた手術支援システムが開発され、手術の精度向上に貢献しています。建築業界では、ARを使って建物の完成イメージを事前に確認できるサービスが登場し、設計や施工の効率化に役立っています。

スポーツ分野では、ARを活用したトレーニングアプリが開発され、フォームの確認や改善に活用されています。

このように、AR技術は私たちの生活をより便利で豊かにする可能性を秘めており、今後もさらなる発展が期待されます。

理由③|ブラウザ上でAR体験ができるようになったから

アプリ不要のWebARが登場し、ARの導入ハードルが大幅に下がりました。従来は、AR体験をするために専用のアプリをダウンロードする必要がありましたが、WebARではブラウザ上でARコンテンツを表示できるため、ユーザーは手軽にAR体験を楽しめるようになりました。

このWebARの登場は、企業にとっても大きなメリットがあります。アプリ開発やメンテナンスのコストを削減できるだけでなく、ユーザーがARコンテンツにアクセスするまでの手間を省くことで、より多くの人々にAR体験を提供できるようになりました。

例えば、WebARを活用した商品プロモーションでは、消費者は商品パッケージに記載されたQRコードを読み取るだけで、商品の詳細情報や3DモデルをARで確認できます。また、WebARを使った観光案内では、観光スポットに設置されたマーカーを読み取ることで、その場所の歴史や見どころに関する情報がARで表示されます。

ARをビジネスに活用した5つの事例

事例①|NIKEのバーチャル試着体験

AR(拡張現実)技術を活用したファッションアイテム試着を提供する米国企業ZERO10は、ファッションストアJD Sportsと提携し、Nike(ナイキ)の「Need it Now コレクション」のバーチャル試着を店舗で提供しました。

買い物客は、ZERO10のARミラーを通して、Nike Need it Nowの新コレクションを仮想的に試着し、ミラーに映る自身の姿を確認できます。18種類のアイテムを試着可能で、一部アイテムには水滴や花などのAR効果が加えられています。

事例②|パーフェクト「ARバーチャルメイク」

AIとARを活用した美容テクノロジーソリューションを提供するPerfect Corporationは、バーチャルメイクでトレンドの立体感を出す革新的な事例を生み出しました。

AR技術により、チークのパターンやテクスチャーを多様化し、マット、サテン、シマーといった様々な質感をリアルに再現。さらに、幅広い色合いや質感、色の組み合わせを自由に試すことで、顔の立体感を最大限に引き出すパーソナルなメイク体験を実現しました。

▼参考リンク

ARバーチャルメイク | パーフェクト株式会社

事例③|熊本県阿蘇市「うちのくまモン知りませんか」

このイベントは、阿蘇エリアを満喫しながら謎解きイベントに参加できるものです。WebARを活用した謎解きとドライブ観光を組み合わせた体験型リアル謎解きゲームで、「パラレルワールドに迷い込んでしまったくまモンを助け出す」というストーリーに沿って、阿蘇エリアのスポットを車で巡りながら謎を解いていきます。

▼参考リンク

ARリアル謎解きゲームinくまモンランド 阿蘇編「うちのくまモン知りませんか?」

事例④|ARでのこす・伝える震災遺構宮城県南三陸町防災対策庁舎

宮城県南三陸町の防災対策庁舎は、屋上が高さ12メートルあり、東日本大震災では職員や住民が避難しました。

しかし、15メートルを超える津波に襲われ、多くの方が犠牲となりました。NHKはこのような過去の体験をARで残すプロジェクトに取り組んでいます。

▼公式サイト

ARでのこす・伝える東日本大震災の遺構・宮城県南三陸町防災対策庁舎|NHK AR

事例④|長岡技術科学大学の事例

長岡技術科学大学は、卒業式・入学式において、ノーコードWebARサービス「palanAR」を活用したARフォトフレームを導入しました。

QRコードを読み込むだけで、誰でも簡単に学校オリジナルのフォトフレームで写真撮影を楽しめます。

▼参考リンク

AR事例 |長岡技術科学大学の卒業式・入学式向けARフォトフレーム

事例⑤|カゴメ株式会社の事例

野菜生活100に使用されているフルーツの美味しさの秘密を、ARを活用して農家さんが直接紹介するクイズ企画が実施されました。

WebARプラットフォーム「8th Wall」の技術を用いて開発され、ARで撮影した写真をInstagramに投稿すると、抽選でオリジナルグッズが当たるキャンペーンも同時開催されました。ARを活用したプロモーションは、消費者の記憶に残りやすく、商品の魅力を効果的に伝えることができる手法として注目されています。

▼参考リンク

【美味しさの秘密はARで!】アプリ不要で体験できる「おいしい秘密を教えて農家さん」の提供を開始!(株式会社エージーと連携)

事例⑥|三菱重工業株式会社:MR グラス活用

航空機胴体パネルの組み立て作業は、多種多様な細かい作業工程があり、従来の図面による作業指示では、位置、種類、加工・仕上げ方法などの把握・確認に時間がかかり、ミスの発生も懸念されていました。

そこで、作業者が装着するヘッドマウント型MRグラスに、実物に対して取り付け後の部品を含む3Dモデルと、作業箇所のリベット位置・種類・加工情報などを重ねて表示するシステムを導入しました。これにより、作業者は図面やテンプレートを参照することなく、リベットや部品の位置、形状、方向を瞬時に把握できるようになり、作業効率の向上と品質の向上につながりました。

▼参考リンク

MR グラス活用による現場作業効率化 

事例⑦|トヨタ自動車:HoloLensの活用

トヨタ自動車はマイクロソフト社と連携し、AR技術を活用した自動車整備作業の効率化を図るため、「HoloLens 2」を導入しました。ARグラスの一種である「HoloLens 2」は、車両情報や作業項目を現実空間に重ねて表示し、タッチ操作、音声操作、視線操作に加え、視界共有による遠隔地からの作業支援も可能です。

▼参考リンク

トヨタとマイクロソフトがタッグ!ARで車両整備を効率化

ARをビジネスで上手く導入するための5つのポイント

続いてARをビジネスで上手く導入するための5つのポイントについて解説していきます。

▼ARをビジネスで上手く導入するための5つのポイント

  • ポイント①|ARはツールの一つであることを理解する
  • ポイント②|ユーザー体験ベースのコンテンツづくりが重要
  • ポイント③|ユーザーの使用環境への配慮が必要
  • ポイント④|ツール/技術選定
  • ポイント⑤|ARがどう課題解決に繋がるのかを考える

それぞれのポイントについて以下で詳細に解説していきます。

ポイント①|ARはツールの一つであることを理解する

ARの最大のメリットは、視覚的に多くの情報をわかりやすく伝えられる点です。しかし、ARはあくまでツールの一つであり、導入する目的は販促効果の向上や業務効率化など、具体的な目標設定が必要です。そのため、ARを導入する際は、商品やキャンペーンと連動させるなど、具体的な活用方法を事前に検討することをおすすめします。

ポイント②|ユーザー体験ベースのコンテンツづくりが重要

ARを活用したマーケティングは、視覚的な訴求力が高く注目を集めやすい一方で、ただARを導入するだけでは、購入などユーザーの行動変容に繋げることができません。

ARを導入するだけでは十分ではなく、ユーザーがAR体験を通じて自然と購買や情報収集などのアクションを起こすような、適切なマーケティング動線を設計することが重要です。

また、ARコンテンツの内容も重要です。単に魅力的なビジュアルを提供するだけでなく、ユーザーが直感的に操作でき、楽しみながら体験できるコンテンツであることが求められます。

ユーザーが能動的にARコンテンツに関与し、その体験を通じてブランドへの愛着や興味関心を深めるような仕掛けを施すことが、ARマーケティング成功の鍵と言えるでしょう。

ポイント③|ユーザーの使用環境への配慮が必要

ユーザーの利用環境によってARコンテンツの表示が変化する場合があります。これは、iPhoneやAndroidなどのスマートフォン、XRグラスといったデバイスの種類によって、AR体験に影響を与える要素が異なるためです。その他にも、同じデバイスの中でも以下のような変数も想定することができるでしょう。

  • デバイスの処理能力
  • カメラの性能
  • ディスプレイの種類
  • センサーの種類
  • オペレーティングシステム

これらの要素を踏まえ、多様な環境に対応できるよう開発を進める必要性があるのが、ARの難しさと言えるでしょう。

ポイント④|ツール/技術選定

AR開発において、ツールや技術の選定は非常に重要です。

技術面では、Webブラウザで動作するWebARか、アプリとして提供するネイティブARか、それぞれのメリットとデメリットを比較検討する必要があります。例えば、ハードウェアに依存しないWebARは、幅広いユーザーへのリーチが期待できます。

ツール面では、ゼロから開発するスクラッチ開発か、palanARのようなノーコードツールを活用するのかを選択する必要があります。それぞれにメリットとデメリットがあり、開発規模やチームのスキル、予算などを考慮して最適な方法を選ぶことが重要です。

ポイント⑤|ARがどう課題解決に繋がるのかを考える

ARを活用してビジネスを前進させたいと考えた際には、ARがどのように課題解決に繋がるのかを具体的に理解する必要があります。プロモーションや業務効率化といった目的を達成するためにARを導入するにしても、「ただ新しい技術を取り入れた」というだけでは不十分です。

プロモーションにおいては、AR施策が実際に認知獲得に貢献したのか、具体的な数値で効果を測定する必要があります。業務効率化においては、従業員の業務工数が実際に削減されたのか、定量的な評価を行うことが重要です。

まとめ

ARは、現実世界にデジタル情報を重ね合わせる技術で、エンターテイメントだけでなくビジネスでの活用も広がっています。2030年には国内市場が16兆円を超え、世界市場も2029年までに2500億ドルに達する見込みです。

近年、大手IT企業の参入、ゲーム以外の活用事例の増加、WebARの登場により、ARはさらに注目を集めています。活用事例は、ナイキのバーチャル試着、バーチャルメイク、観光案内、防災教育、ARフォトフレームなど多岐にわたります。

ARをビジネスで成功させるには、ARをツールとして捉え、具体的な目標を設定し、ユーザー体験を重視したコンテンツ制作、利用環境への配慮、適切なツール・技術の選定、ARによる課題解決を明確にすることが重要です。

AR施策を成功させるには、完成イメージだけでなく、その実現に必要な技術とその活用方法を深く理解することが重要です。企業ごとに状況は異なるため、表面的な模倣では再現が難しいケースもあります。自社に適した技術やサービスを見つけることが成功の鍵です。

本記事がAR導入の一助となれば幸いです。

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