東京証券取引所グロース市場へ上場を控えたANYCOLOR株式会社、そのAR技術を探る

4月28日、ANYCOLOR株式会社が、東京証券取引所グロース市場への新規上場を発表しました。ANYCOLOR株式会社はVTuber/バーチャルライバープロジェクトである「にじさんじプロジェクト」の運営をメインしていますが、技術力の高さもファンの間ではしばしば話題になる企業でもあります。

「にじさんじプロジェクト」とは?

「にじさんじプロジェクト」とは、約150名のVtuberが所属するプロジェクトです。各々のライバーが日々配信するのをサポートするだけでなく、ファンクラブの運営やライブ、ライバーが出演するバラエティ番組の企画なども行っており、バーチャルに止まらない幅広い企画を行っていることで知られています。

Vtuber事務所ではしばしば同じような活動に走りがちですが、「にじさんじプロジェクト」で特徴的なのが、150名という圧倒的なボリュームで、性別や年齢を問わない個性豊かなライバーが揃っていることです。そのためにジャンルや内容に囚われない幅広い企画が可能になっています。

 

何がすごいの?

トラッキング技術

にじさんじプロジェクトでは、通常の2Dの他に3Dの体を持つライバーも多くいます。そのため、かなりの頻度で3D配信が行われていました。ファンの間ではこたつ布団のなめらかさや、縄跳び、さらにはローションカーリングといったイロモノまで可能にした、日々進化するトラッキングの技術が話題になることがありました。

https://www.youtube.com/watch?v=ZjQlKmoFBuA

通常、Vtuberの業界では、ライバーのトラッキングに注力するため、棒やパネルなどの動かないもののみを再現することが多く、それ以外のものは「見えないけどある」ものとして楽しむことが通例です。

これを解消するためには、例えばこたつは布団のさまざまな部分にトラッキング用のビーコンを設定し、動きを反映させる必要があります。
縄跳びでは回す縄の速さについていけるような高度な技術が必要ですし、ローションカーリングでは、ローションの中にあっても大丈夫なように強度や精度を高める必要があります。こういった細かい部分を再現していく労力は並大抵のものではなく、ライバーの活動を広げていきたいという熱意が見て取れます。

ARとしての技術

ここまで紹介してきたのは全て3D空間内で完結するものでした。
ここまででも十分高度な技術ですが、ARの分野でファンをさらに驚かせたのが「にじさんじ AR STAGE “LIGHT UP TONES”」でしょう。
ライバーが階段を昇り降りするのはもちろん、バーチャルであるはずのライバーと生バンドがアイコンタクトを取る、ライトの色がほぼ正確に3Dへ反映されるなど、まるでライバーが本当にそこにいるかのような演出がなされていました。

https://youtu.be/e_Ht29q2oQw

通常、階段の上り下りは段差を正確にトラッキングすることや、段の下にある足がそのままでは透けて見えてしまう(3Dが現実の遮蔽物を無視してしまう)ことが課題となりますが、全く違和感なく成立しています。
ライトの色に関しても、現実のライトがそのままバーチャルに反映されることはないため、通常ライトを直接ライバーに当てるような演出は避けてライブを行います。
現実の空間と3D空間を混ぜると、影や障害物などの考慮すべき点が多くなるため、アイコンタクトができる状況も通常はありません。

この技術はさらに磨きがかかっており、後のライブではライバーと会場をシームレスに行き来するような演出すら可能となっています。

https://youtu.be/90YD3L3KCxc

まとめ

Vtuber関連企業として上場する企業はおそらく本例が初でしょう。ライバーの魅力もさることながら、その高い技術力が今後どういった進化を見せるのか注目です。

 

参考文献

https://www.moguravr.com/nijisanji-interview-4/