政府は、インバウンド対策の一環として、「ARによる訪日外国人旅行者への案内情報の提供に向けて」というガイドラインを制定しました。
これを背景に、政府をはじめ各地方自治体が訪日外国人観光の充実に向けて動き始めています。それとあわせて、国内でもARを活用した観光施策が各地で行われています。
そこで、この記事では以下の内容について解説していきます。
- ARと観光地を組み合わせることで得られる可能性
- ARと観光を組み合わせた事例について伝える
この記事を読むことで、ビジネス的な観点から参考にできるARの活用事例を学ぶことができます。
消費者の声からわかる「AR技術と観光地の可能性」
ここでは、消費者の声からわかる「AR技術と観光地の可能性」について解説していきます。主に、我々で独自に調査した内容をもとに、ARと観光の可能性について説明します。
- 可能性① |AR体験で競合との差別化ができる
- 可能性②|観光地独自の情報を視覚的に楽しめるコンテンツが人気
- 可能性③|AR体験でマネタイズが可能
本記事では「半数以上がARコンテンツのある観光地に行きたいと回答!観光地でのARに関する意識調査の結果をpalanが公開」を参照して執筆しています。
可能性① |AR体験で競合との差別化ができる
AR技術は、観光地を訪れる観光客の興味を惹き、満足度を向上させ、訪問者に深い印象を与えることができます。
以下の調査結果は、「ARを体験した経験がある人」・「ない」人の割合を示したグラフです。
以下のグラフを見ると、旅行先でAR体験をしたことのある人の数は10%程度であることが分かります。ただ、ここ数年で話題になったAR体験が10%もあるのは、それだけAR技術が身近になってきている証でしょう。
では、続いて旅行先でAR体験をした人の満足度合いはどの程度でしょうか?以下のグラフはAR体験をした人の満足度について調査した結果です。
まず以下の内容からわかるのは、ARを体験した人の50%以上が、「次も行きたい」、「満足した」という感想を持っていることがわかります。このグラフを見るだけでもAR×観光の可能性を感じることができます。
可能性②|観光地独自の情報を視覚的に楽しめるコンテンツが人気
旅行先で体験したいARとして「歴史復元AR」や「プロジェクションマッピングAR」が挙げられます。
視覚的に楽しむことのできるコンテンツの人気が高いことが判明しています。
「施設ガイド」「道案内AR」など、慣れない土地でも便利に活用できるARにも多くの人が注目しています。
この2つに共通しているのは、視覚情報にアプローチしている点です。言語に依存せずとも的確な情報を伝達できるのはARの強みであり、ユーザーにも受け入れられていることがわかります。
可能性③|AR体験でマネタイズが可能
以下の調査から、ほとんどのコンテンツで70%以上の人が「ARコンテンツに料金を支払っても体験したい」と考えていることがわかっています。
AR体験に対して満足度が高い上に、それに対してユーザーはお金を支払う意向が高いことがわかります。
日本国内でのARを活用した観光事例
ここからは実際に各地で開催されたARを使用しているイベントをご紹介します。
文化財×AR観光の事例
事例①|[WebAR] 宮川香山 眞葛ミュージアム
「みるふれる 眞葛焼 -DXで鑑賞する眞葛焼- 」という特設企画展示がWebARを活用して香川県で開催されました。
通常ガラスケース越しでしか鑑賞することができない眞葛焼を、DXを活用してあらゆる角度から見て触れることができるようにしている点が特徴です。ARを使った「デジタル」な展示と、3Dプリントで作成した眞葛焼のレプリカを使用した「リアル」な展示との両方を楽しむことができます。
▼関連リンク
AR技術で伝統工芸品の保護に挑戦する宮川香山 眞葛ミュージアムの取り組み
事例②|[ARアプリ] 史跡 佐渡金山:ISLAND MIRRORGE
史跡 佐渡金山という遺跡を舞台に坑道内で体験できるMRアトラクションがARアプリを活用して開催されました。
この企画は、歴史遺産×XRをコンセプトに、「佐渡島」にある「史跡 佐渡金山」の坑道内を実際に歩きながら体験することができるアトラクションです。
▼関連リンク
【歴史遺産×XR】「史跡 佐渡金山」の坑道に魔法がかかる!?MRアトラクション『ISLAND MIRRORGE(アイランド・ミラージュ)』4/16(金)グランドオープン
事例③|[WebAR] 奈良・明日香村のARスタンプラリー(奈良県明日香村)
明日香村の観光スポットを巡るARスタンプラリーです。
豊かな歴史資源ゆえに、50-60代の歴史好き・アカデミックな層が訪れることの多い、明日香村ですが、ARで可愛いキャラクターを出すことによりZ世代へのリーチを広めています。アプリをDLせず各スポットを巡り、スタンプを集めると景品がもらえる仕組みになっています。
スタンプラリーを通して、明日香村の豊かな歴史文化を楽しみながら観光することができます。
▼関連リンク
奈良県明日香村にAR!? palanのAR Mapsが「AR明日香村スタンプラリー」に採用され、好評につき期間延長実施中!
事例④|[ARアプリ] 桜井市の伝統文化財ARアプリ(奈良県桜井市)
桜井市の伝統文化財をARで楽しめる専用のアプリです。
アプリを使って、伝統文化財をARで表示したり、説明を聞いたりすることが可能になっています。桜井市の歴史と伝統文化について、より深く理解することができます。
▼参考リンク
「YAMATO 桜井周遊ARガイド」アプリに新コンテンツが追加されました!
事例⑤|[ARアプリ] 下野薬師寺のAR/VRアプリ「VR東の飛鳥 甦る下野薬師寺」(栃木県下野)
下野薬師寺の歴史をAR/VRで体験できるアプリです。このアプリを使って、当時の姿に復元された薬師寺をAR/VRで楽しめます。
このアプリ内の機能には、様々な技術が詰め込まれています。
主な機能は下記のものがあります。
- バーチャル映像…史跡地周辺でスマホをかざすと下野薬師寺が反映される
- すごろくスタンプラリー…ゲームで史跡を巡ることができる
- カメラ撮影… 当時の衣装を再現して撮影できる
- マップガイド…GPS連動で目的地まで案内する
- 観光ガイド…周辺のおすすめスポットがわかる など…
▼参考リンク
下野薬師寺アプリができました!
事例⑥|[WebAR]京都府にある世界遺産の仁和寺へ五大明王が表示されるARカード
仁和寺の五大明王をAR技術で体験できるイベントです。ユーザーの中で、配布条件を満たした方限定ではあれば、五大明王のARカードを獲得できます。
スマートフォン・タブレット等でARカードに記載されたQRコードを読み取ると、五大明王それぞれの説明とともに、ビジュアルがARで表示される仕組みになっています。
実物大の像が表示されるため、インバウンドをはじめ人気を博しています。
▼参考リンク
ProVision、京都府にある世界遺産の仁和寺へ五大明王が表示されるARカードを作成
温泉地×AR観光の事例
事例①|[WebAR] 「袋田の滝」(茨城県)
袋田の滝の周辺をARで楽しめるアプリです。このアプリは主に写真撮影に特化しており、施設内で大子町観光の案内動画や、たき丸フォトフレーム、恋人の聖地フォトフレームなどを配信しています。
QRコードから専用アプリをダウンロードし、ARマーカーを写すだけでコンテンツを楽しめる手軽さも人気の理由の1つでしょう。
▼参考リンク
袋田の滝で,観光AR(拡張現実)コンテンツの配信を始めました!(動画,フォトフレーム)
事例②|[WebAR] 福島県飯坂温泉「飯坂温泉ARまち歩き 飯坂真尋と力のたまご」
ここで紹介するのは、観光庁の「誘客多角化等のための滞在型コンテンツ造成」にともなう実証事業に採択された飯坂温泉観光協会の「飯坂温泉ARまち歩きと力のたまご」という取り組みです。
WebARを活用したまち歩きコンテンツなので、特別なアプリをダウンロードすることなく観光スポットを巡りながらARコンテンツを楽しめる点が魅力です。
ARスポットの近くでは、隠された暗号を解読する謎解きゲームができるので、老若男女問わず楽しむことができます。
▼関連リンク
株式会社palanシステム制作のWebARコンテンツ「飯坂温泉ARまち歩き 飯坂真尋と力のたまご」が福島県・飯坂温泉で開始されました
キャラクター×AR観光の事例
事例①|[ARアプリ] 福島県のウルトラマンスタンプラリー
続いて紹介するのは、AR(拡張現実)技術を活用したウルトラマンのデジタルスタンプラリーです。
ポイント施設となる県内30ヶ所の観光施設等に設定されたマーカーをアプリで読み取ることで、スマートフォンの画面上にウルトラヒーローや怪獣が現れる仕組みになっています。
出現したウルトラヒーローや怪獣等と写真撮影をすることで、アプリ内でスタンプがたまります。さらに、オリジナル賞品のプレゼントに応募できる特典も用意されています。小さい男の子やウルトラマンのファンの方に人気となっています。
▼公式サイト
https://ultrafukushima2023.com
事例②|[ARアプリ] 鬼滅の刃 湯めぐりの旅(宮城県)
人気漫画「鬼滅の刃」をテーマにしたARを活用したイベントです。
専用アプリを使って市内各所の温泉施設を巡り、ARで「鬼滅の刃」のキャラクターと触れ合ったり、写真を撮ったりすることができます。
昨今、鬼滅の刃の人気はとても高く、作品ファンの方たちが多く来場しているそうです。
▼公式サイト
onsen-kimetsunoyaiba.com
事例③|[WebAR] 熊本県阿蘇市「うちのくまモン知りませんか」
誰もが1度は目にしているであろう、くまモンが登場する熊本県のイベントです。車でのドライブとARを組み合わせた斬新なものでした。
阿蘇エリアをゆっくりと堪能しながら、気軽に参加できるこのイベントは、「参加費が無料」なだけでなく、複数日程に分割しての参加も可能となっています。
「パラレルワールドに迷い込んでしまったくまモンを助け出す」というストーリーに沿って、阿蘇エリアのスポットを車で巡りながら、WebARを活用しさまざまな謎を解き明かしていく点が魅力のイベントです。
▼公式サイト
https://nazoxnazo.com/event/kumamonland
レジャー施設×AR観光の事例
事例①|[WebAR] アクア・トト ぎふ スタンプラリー
岐阜県にある世界淡水魚水族館アクア・トトぎふでは、ブラウザにてスタンプラリーを体験できる「palanARラリー」を使用し、来館者向け限定コンテンツとして、WebARのスタンプラリーを導入しています。
WebARによるスタンプラリーを導入したことで、従来のような、不特定多数の方がスタンプを手にしたり、台紙を配布が不要になるなど、コスト面・感染対策の面で大きな革新がありました。
▼関連リンク
WebARによるスタンプラリーが、世界淡水魚園水族館アクア・トト ぎふの館内イベントでスタート
事例②|[ARアプリ] ImaginAR in NAGOYA
愛知県名古屋市の栄地区を舞台に、新感覚街あそびARアプリ「XR City」を活用したさまざまな物語作品で遊ぶことができる体験型エンターテイメント「ImaginAR(イマジナル) inNAGOYA」が開催されました。
アニメ作品を舞台にした謎解きゲームや、恐竜の世界を冒険するアトラクションなどが展開されました。
▼関連リンク
名古屋栄地区に、ARで複数の物語の舞台が現れる!XR Cityを活用した体験型エンターテイメント「ImaginAR in NAGOYA」を開催!
事例③|[WebAR] 新江ノ島水族館-WebARを活用した七五三用デジタルフォトフレーム
WebARによるデジタルフォトフレームが、新江ノ島水族館(所在地:神奈川県藤沢市)の館内イベントに採択・導入されました。
AR技術でフォトフレームを表示し、どこでも写真を撮ることができます。
コロナ禍において密を避け、安心してオリジナルの写真撮影ができる仕組みが導入されたことで、感染対策の面で大きく貢献しています。
▼関連リンク
WebARを活用した七五三用デジタルフォトフレームが新江ノ島水族館に導入!
事例④|[WebAR] ミニ蔵人AR
千葉県にある日本酒メーカー「飯沼本家」では、日本酒の製造過程をARを使用しながら解説しています。
まず「ミニ蔵人AR」では、飯沼本家の日本酒「甲子(きのえね)」の製造過程をミニ蔵人が分かりやすく簡単に案内してくれます。
また「BIG酒瓶AR」は、飯沼本家の敷地内に設置されているARフォトスポットで、大きな酒瓶と一緒に写真撮影をすることが可能です。
これらのコンテンツは日本語だけでなく英語にも対応しているため、海外の方でも簡単に飯沼本家の世界観をARで体験可能となっています。
▼関連リンク
WebAR制作サービスpalanAR、老舗酒造のインバウンド誘客促進を図るARコンテンツを公開
まとめ
AR技術は、これからの観光業界を盛り上げるための重要な鍵です。本記事で紹介した調査結果を見てのとおり、AR体験を提供すれば多くのユーザーが満足してくれていることも判明しています。
お役立ち資料
観光・旅行業界に関わる方向けに、AR活用についてまとめた資料です。
ARを活用することによって、今までにない魅力的な体験を提供することができ、集客や満足度向上に繋がります。
本資料では、ARが観光・まちづくり分野になぜ活かせるか、メリットや企画で気をつけるポイントなどを、初めての方にもわかりやすく解説しております。
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