2025年6月9〜13日(太平洋時間)、Appleの開発者会議であるWWDC 2025が開催中です。今年もUIの「Liquid Glass」への全面刷新、Apple Intelligenceの強化など、さまざまな発表が行われました。 6月9日に行われた基調講演の内容やプレスリリースから、XR分野での発表をまとめました!
1.visionOS 26へのアップデート
昨年のWWDC24では「visionOS 2」が発表されましたが、今年は全OSで命名規則を刷新し、「visionOS 26」へとアップデートされることが発表されました。iOSやiPadOSも合わせて「iOS 26」「iPadOS 26」となります。 主なアップデート内容はこちらです。
- 空間ウィジェットがリリース
- 空間シーンの強化
- 空間ブラウズがリリース
- Personaの劇的進化
- 空間体験の共有の強化
- 企業向け機能の強化
- 空間アクセサリへの対応
- 空間コンテンツ制作の強化
それぞれの機能について、実際にApple Vision ProをvisionOS 26にアップデートし、体験した感想も盛り込みつつ紹介します!

※開発者向けbeta公開段階のため、動画と画像はスクリーンショットではなく、公式リリースのものを使用しています
①空間ウィジェットがリリース
visionOS 26の目玉の一つが「空間ウィジェット」です。iOSでおなじみのウィジェットが空間化され、ユーザーの物理的なスペースに溶け込むように配置できるようになります。
一度配置したウィジェットは、再起動後も同じ場所に表示され、フレームの幅、色、奥行きなどを自由にパーソナライズできる点が特長です。
例えば部屋の壁にカレンダーウィジェットを貼り付けると、実際にカレンダーを壁に貼ったかのように表示され続けます。 壁の裏に回るとウィジェットが見えなくなり、まるで本物のカレンダーを貼っているようです。
デジタルと現実がシームレスに繋がって、まさに現実が拡張されたような体験ができる機能となっています。 またデベロッパはWidgetKitを使用し、独自のウィジェットも作成できるようになります。
②空間シーンの強化
2D写真に自然な奥行きを加える「空間シーン」機能が進化し、新しいAIアルゴリズムと計算深度を活用することで、2D写真から複数の視点を作成し、画像を一段とリアルな空間シーンに変えることが可能になりました。
写真が「空間シーン」に変換されると奥行きが出てとてもリアルで、実際に写真が撮影された場にいるかのような感覚になります!
写真アプリ、空間ギャラリーアプリ、Safariで空間シーンを見ることができます。
③空間ブラウズがリリース
「空間ブラウズ」機能もリリースされました。 アドレスバーのアイコンから空間ブラウズモードを選択すると、通常のウィンドウで区切られた表示方法から、周囲が暗くなり、ウィンドウの境目がぼやけます。
気が散る要素が隠れて、テキストと写真のみになり、ページの内容に集中できるようになります。
右脇にはAI要約のウィンドウが表示され、ワンタップで要約できるのも情報収集の効率が上がりそうです。
④Personaの劇的進化
ビデオ通話中にユーザーの姿を映し出す「Persona」も、visionOS 26で劇的な進化を遂げました。 ボリュメトリックレンダリングと機械学習テクノロジーを活用し、表情の豊かさとシャープさが改善されています。
以前のPersonaも十分リアルでしたが、少しぼんやりとした印象もあり、今回の改善で髪や目などそれぞれのパーツの輪郭がかなりはっきりし、顔の動きもよりリアルになっています。 髪や肌はもちろん、個人的には口を開けた時の歯の表現がかなり現実に近いと感じました。
実際にその場で顔を見合わせて会話しているのと変わらない体験に近づきそうです! ビジネスにおけるオンライン会議や、友人とのビデオチャットなど、様々なシーンでの活用が期待されますね。
⑤空間体験の共有の強化
SharePlayを活用した空間体験の共有もより手軽に行えるようになりました。visionOS 26では、同じ部屋にいるほかのApple Vision Proユーザーと空間体験を共有することができます。
友人と一緒に最新の映画を観たり、空間ゲームを楽しんだり、企業向けには、Dassault Systèmes社の3DLiveのようなアプリを使って、目の前の人や遠くの同僚と3Dデザインの作業を一緒に行うことが可能になります。
分散したチームでの協業がこれまで以上に円滑に進み、生産性の向上が期待されます。
⑥企業向け機能の強化
Apple Vision Proは、世界中の企業でデザイン、トレーニング、セールスなどのワークフロー効率化に取り入れられています。visionOS 26では、企業向け機能がさらに強化されます。
これまでApple Vision Proを共有するには、使いたい機能によっては人ごとに目や手のデータを設定する必要がありました。 組織のデバイスをチームメンバー間で簡単に共有できるようになり、目や手のデータ、眼鏡とコンタクトの処方箋、アクセシビリティ設定をiPhoneに安全に保存して、ゲストユーザーとしてすぐに利用できるようになります。
デバイスの共有がより手軽になり、多くのユーザーがApple Vision Proを活用できるようになるでしょう。 また、医療記録などの機密資料を特定の人のみが閲覧できる「Protected Content API(極秘モード)」も追加されます。
企業は機密性の高い情報を安全に扱うことができ、活用範囲がさらに広がります。
⑦空間アクセサリへの対応
visionOS 26では、空間アクセサリに対応し、コンテンツを作成したり、体験したりする方法が広がります。 Apple Vision Proのために設計されたペン型デバイスのLogitech Museは、Spatial Analogueのようなアプリ内で3D空間における精密な描画と共同作業を可能にします。
デモ動画では、椅子の制作現場で、3Dモデルの椅子にLogitech Museを使って寸法を書き込み、その場にいるもう1人に共有する様子が映されています。
SonyのPlayStation VR2 SenseコントローラがvisionOS 26に対応
さらに、SonyのPlayStation VR2 SenseコントローラがvisionOS 26に対応することも発表されました。Pickle ProのようなvisionOS向けゲームで、すべての動きがトラッキングされ、一段と臨場感あふれるゲームプレイが楽しめるようになります。
どちらもまだ体験できていないため、体験でき次第、操作感などについてレポートします!
⑧空間コンテンツ制作の強化
Adobeからは、Premiereのパワーを活かしたvisionOS用の新しいAdobeアプリが登場し、Apple Vision Proで空間ビデオを直接編集してプレビューできるようになります。 空間コンテンツ制作のワークフローを大きく改善しそうですね!
また、GoPro、Insta360、Canonと協力し、180度カメラや360度カメラ、広角レンズで撮ったビデオをvisionOSでネイティブ再生できるようになりました。アクションカメラで撮影した臨場感あふれる映像を、まるでその瞬間に戻ったかのような感動とともに再び味わうことができるようになります。
3Dオブジェクトをページに埋め込み可能に
Webサイトでは、3Dオブジェクトをページに直接埋め込むことができ、奥行きと立体感がわかるようになります。 3Dオブジェクトを目の前の空間に置いて見ることも可能になります。 公式の動画では、家具のECサイトで、スツールの3DモデルをWebサイトから取り出し、実際に部屋に置いて確認する様子が映されています。
こんな風にWebサイトに3Dコンテンツを埋め込めるとなると、ECサイト、エンタメ、教育などさまざまな場面で表現の幅が広がりそうですね! 前述の空間ブラウズと合わせて、「空間ウェブの時代」を牽引する重要な要素となりそうです。
2.Apple Intelligence

今回のWWDC 2025の基調講演で最も注目された発表の一つが「Apple Intelligence」です。開発者はApple Intelligenceの中核にあるデバイス上の大規模言語モデルに、Foundation Modelsフレームワークを使ってすべてのアプリが直接アクセス・活用できるようになると発表されました。
また、Apple Intelligenceを利用して画像生成できるAIツール「Image Playground」がアップデートし、ChatGPT連携による画像生成機能が追加されました。より手軽に、より多様な画像を生成し、AR/XRコンテンツ作成にも活用できそうです。
3.新しいデザイン「Liquid Glass」
WWDC 2025で発表された「Liquid Glass」は、12年ぶりに刷新された新しいデザインプラットフォームです。iOS 7以来の大規模なデザイン変更であり、史上初めて、iOS 26、iPadOS 26、macOS 26などプラットフォーム全体にわたって導入されます。
この「Liquid Glass」はvisionOSにインスパイアされており、ガラスの光学的特性とApple独自のなめらかさを持ち、コンテンツやコンテクストに応じて変化し、光を屈折させて動きに反応するデザインです。
これまではiPhoneやMac、Apple Vision Proとそれぞれ分かれていたデザインが、Liquid Glassという共通のデザインシステムによって統一されることによって、デバイス間の操作に一貫性が生まれ、今後Apple Vision Proがより普及した際にも、新しいデバイスへの学習コストが低減されていきそうです。
アプリアイコンがLiquid Glassの複数の層でできていたり、Dockやウィジェットにも新デザインが適用されるなど 、視覚的な要素が空間コンピューティングの概念に近づくことで一般ユーザーの間にもAR/XRへの理解や関心が自然と浸透していくことも期待されます。
また、開発者やデザイナーにとっても、Apple Vision Proとの連携や移行を前提としたアプリ設計が進む可能性があります。

「Liquid Glass」の登場により、他のデバイスのUIデザインもVision Proに近くなっていくことは、単なる見た目の変化に留まらず、Appleが目指す空間コンピューティングの未来を、より広範に浸透させるための動きと言えるでしょう。
4.その他アップデート
その他にもこれらの点がアップデートされました。
視線で操作する「注視してスクロール」
「注視してスクロール」機能が導入され、ユーザーは自分の目だけを使ってアプリやウェブサイトを探索できるようになります 。 手を使わずにコンテンツを閲覧できるため、より自然で没入感のある体験が可能になります。
スクロール速度をカスタマイズできるため、個々のペースに合わせて快適に情報を読み進めることができます。
開発者は「注視してスクロール」をvisionOSアプリに統合できるため、この操作方法に対応したさまざまなアプリケーションが登場することが期待されます。
再設計されたコントロールセンター
コントロールセンターが再設計され、ゲストユーザー、集中モード、トラベルモードなどの機能が1つのビューに便利に表示されるようになりました。
ユーザーは簡単に音楽を管理したり、環境の設定を調整したり、Mac仮想ディスプレイに接続したりできるようになります。 複数の設定や機能へのアクセスがシンプルになることで、ユーザーはよりスムーズにApple Vision Proを操作し、自分の環境をパーソナライズできるようになります。
特に、ゲストユーザー機能への素早いアクセスは、複数人でVision Proを共有する場面での利便性を大きく向上させそうです。
Apple Vision Proを装着しながらiPhoneのロックを解除可能に
完全に没入感のある体験をしている時でも、ユーザーがApple Vision Proを装着しながらiPhoneのロックを解除できるようになりました。 この機能は、iOS 26を搭載したFace ID対応のiPhoneモデルの「設定」で有効にすることができます。
Apple Vision Proを使用中にiPhoneを取り出してロックを解除する手間が省け、作業やエンターテイメントの流れを中断することなく、デバイス間の連携をスムーズに行うことができるようになります。
iPhoneからの通話のリレーに対応
iPhoneからの通話リレーに対応し、ユーザーはApple Vision Proから直接電話に出たり、ピープルビューから連絡先の電話番号を選択したり、ウェブページの電話番号をクリックして電話をかけたりすることができるようになります。
Apple Vision Proを装着したまま、iPhoneを取り出すことなく通話を開始・応答できるようになり、ビジネスシーンでの活用や、ハンズフリーでのコミュニケーションの多いユーザーにとって大きなメリットとなるでしょう。
まとめ・特に注目な点
以上が主なXRの注目発表でした!多くの点で堅実にアップデートされているものの、新デバイスのような大型の発表はないWWDCとなりました。
数が多いため、XR/ARで特に注目な点を挙げるとすれば、以下の3点になるかと思います。
①Webサイトに埋め込んだ3Dオブジェクトを空間に取り出し操作できるようになる
→ECサイトをはじめとしたWeb体験を変える可能性
②新しいAdobeアプリが登場し、Apple Vision Proで空間ビデオを直接編集してプレビューできるように
→空間コンテンツ制作のワークフローを大きく改善する可能性
③SonyのPlayStation VR2 Senseコントローラなど、空間アクセサリに対応
→コンテンツ作成や共同作業、ゲームなどの体験を変える可能性
Apple Vision Proの廉価版、スマートグラスの開発などが噂されるAppleですが、新デバイスの正式発表はまた別の機会となりそうです。常に新たな挑戦を続けるAppleの発表に今後も注目です。
参考記事・動画
Appleのプレスリリース:https://www.apple.com/jp/newsroom/2025/06/visionos-26-introduces-powerful-new-spatial-experiences-for-apple-vision-pro/
基調講演の動画:
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Apple Vision Proコンテンツ開発:https://studio.palanar.com/palanar-vision-studio
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