【AWE USA 2025 レポート】XRはメインストリームへ!

palan代表の齋藤です!

2025年6月10日から12日にかけて、米国カリフォルニア州ロングビーチで開催された世界最大級のXRカンファレンス「AWE (Augmented World Expo) USA 2025」に参加しました。

今年のAWEが打ち出したメッセージは、「XR is Going Mainstream(XRは主流へ)」。XRがもはやニッチな技術ではなく、AIの進化と不可分な関係にありながら、現実世界に普及していくという潮流を感じた3日間でした。

本メディアを運営する株式会社palanも参加し、様々なセッションや出展を見てきました。本記事では、現地の主要な発表や展示、そして未来のトレンドについてレポートします。

※去年のレポート記事はこちらです。

AWE CEO Ori Inbarによるウェルカムキーノート

毎回恒例のAWE創設者であるOri Inbar氏のキーノートで幕を開けました。
Inbar氏は、Snap Spectaclesを使ったARレンズで見事なビリヤードのショットを決めてみせるパフォーマンスで、「XRはもはや未来の技術ではない」と述べました。そして、現在300億ドル規模に達し、世界の映画産業と同じ規模になり、かつ世界経済の10倍の速さで成長するXR市場が「今メインストリーミング(主流)になりつつある」レベルに達した!とメッセージを発しました。

一般的に人口の25%に達するとメインストリームになると言えますが、既にモバイルARは米国人口の35%、VRヘッドセットは27%が利用しているとのことです。
また今年はスマートグラス(AIグラス)が消費者の中で大ヒットし、またSnapやXREALといったデバイスは各国の首脳も試すほどです。先日発表されたAndroid XRのスマートグラスも記者が絶賛し、いくつかのXRカテゴリがヒットしていることから、「XRは決して未来ではなく今既に浸透しつつある」と力強く主張しました。

さらに、現在テックトレンドとなっているAIについて、AIの進化にはXRが不可欠であり、「XRなくしてAIなし」と力強く語りました。これAIがより賢くなるためには、XRを通じて現実世界のデータを学習する必要がある、という主張です。

詳しくはこちらの動画もご覧ください。

注目された発表

主にメインステージで発表された、いくつかの講演をご紹介します。

Snap:一般向けARグラス「Specs」を2026年発売!

今回AWEに初登壇となったSnapの共同創設者兼CEO、Evan Spiegel氏の発表は、最大の注目を集めました。


2026年に一般消費者向けのARグラス「Specs」を発売することを正式に発表しました。現行の開発者向けSpectaclesより大幅に小型・軽量化され、より長時間駆動するとのこと。さらに、Snap OSがOpenAIやGoogle Geminiといった複数のAIモデルと連携し、リアルタイム翻訳や空間認識を活用したインタラクティブな体験が可能になるデモも披露されました。
既存の4億本以上のSnapchatレンズ資産がそのまま活用できる点も大きな強みです。
WebARに注力してきたpalanにとっては、WebXRのサポートが発表されたことにも注目しています!

Spectaclesについてはこちらの記事もぜひご覧ください。

Qualcomm:XRの未来とAIグラスの進化へ

QualcommでXR部門のSVP兼GMを務めるZiad Asghar氏は、同社のXR開発者プラットフォーム「Snapdragon Spaces」が空間コンピューティングをスケールさせるための中核技術であることを強くアピールし、最新チップ「Snapdragon AR1+ Gen 1」を発表。これにより、ARグラスやAIグラス向けプラットフォームとして、より高いパフォーマンスとエネルギー効率を実現することが可能となるとのことです。

途中いくつかのパートナーの取り組みも紹介されました。

MetaはBruno Cendon氏が登壇し、Meta Ray-BanがQualcommのSnapdragon AR1によるマルチモーダルAIが特徴の画期的な成功を収めている点、また今後はOrionがARとAIの未来を切り開くものであることにも言及していました。

GoogleはHugo Swart氏が登壇し、GoogleがAndroid XRを「Gemini時代」の最初のプラットフォームとして位置づけ、没入型VR/MRヘッドセットから小型AIスマートグラスまで、幅広いデバイスをサポートするよう設計されていると説明しました。
具体的な時期は伝えられなかったものの、Samsungの「Project Moohan」は、最新のSnapdragon XR2+ Gen 2を搭載した最初のAndroid XRデバイスとして、年内(動画公開時点)に発売とのことです。

Project Moohanはディスプレイ展示されていたものの、体験等は出来なかった

また、エンターテイメントにおける事例として、カプコンとKDDIによる対角105度の超広角シースルーディスプレイを採用した大阪・関西万博展示のモンスターハンターブリッジも紹介されています。

またAI・ARグラス時代のコントローラとして、KIWEARのスマートリングコントローラも紹介されました。

XREAL:XREALのXRの現在と未来のビジョン

XREALは、先日発表されたAndroid XRに対応するProject Auraに言及しています。
70度以上の広い視野角(FOV)を提供し、また開発者向けエディションが間もなく提供され、一般発売は2026年を予定しているとのことです。

「XREAL Neo」というモバイルバッテリーも発表されました。充電しながらXREALへの映像出力が可能なデバイスです。

実際にブースで体験したXREAL Neo

また、エンタープライズ顧客に焦点を当てた新しいプログラム「XREAL for Enterprise」も発表されました。24時間体制のカスタマーサポート、テクニカルサポート、新製品のリフレッシュなど、専用のサービスが含まれるとのことです。

Niantic Spatial:大規模地理空間モデルとSnapとの連携

AWE USA 2025におけるNiantic Spatialの発表は、空間AIと拡張現実(AR)の未来を大きく切り拓く内容でした。特に注目されたのは、Snapとの戦略的提携であり、両社は今後複数年にわたり、AIエージェントやARグラスが現実世界を理解・ナビゲート・インタラクションできる次世代のAIマップを共同で開発することを発表しました。
また、Large Geospatial Models(大規模地理空間モデル)」について講演し、AIが現実世界を理解・操作できる次世代の空間知能の重要性を解説しました

注目の展示ブース

次にいくつかブースを回って興味深かったものをご紹介します!

Snap

今回非常に注目を集めていたSnapですが、Spectaclesのデバイスの完成度は高く、もちろんまだバッテリーや重さなどの問題はあるものの体験価値が非常に高いものでした。

ダーツアプリ(会場ではなく入手後の映像)

様々なユースケースがあり、例えば外でバスケットボールをしながら体験するものなども!

Niantic Spatial

Niantic Spatialも、昨年に引き続き入口近くに大きくブースを構え存在感がありました。
特にSnapとの業務提携を発表していたこともあり、Spectaclesのコンテンツについて大きくアピールしていました。
屋外のコンテンツもあり、VPSやAIを組み合わせた体験が可能でした。

Peridot Beyond(会場ではなくSpectacles入手後の映像)

またエンタープライズ向けの展示もいくつかされており、3DスキャンやVPSなど、様々な技術を組み合わせた製造業向けなどのコンテンツも展示されていました。

Mentra

スマートグラスのMentra Liveやスマートグラス向けのSDK、AugmentOSを提供するMentraも非常に注目を集めていました。
今年大きく伸びると言われているスマートグラス市場ですが、RayBan Metaをはじめとしてサードパーティにアプリ開発が開放されておらず、また各グラスで別々に開発する必要があります。
Mentraはアプリ開発が可能なMentra Live、またEven RealitiesやVuzix Z100などの開発をクロスデバイスで可能なAungmentOSというSDKを提供しています。

実際私もEven Realities、Vuzix Z100を保有して少しAugmentOSを触り始めていますが、まだまだ発展途上なもののクロスデバイスの開発基盤はとてもニーズがあると感じています。

PLAY FOR DREAM

PLAY FOR DREAMは、MRヘッドセット「Play For Dream MR」を開発している中国のテクノロジー企業です。CES 2025にも出展し、多くの人が体験していました。

特徴として、世界初のAndroidベースの空間コンピューターとして注目されています。
最新のSnapdragon XR2+ Gen 2チップセットを搭載し、OSにはAndroid 15を採用しています。またアイトラッキングも搭載しています(Tobii社と提携)

前回CESで私も体験しましたが、今回はマーカートラッキングで歩き回れるコンテンツでした。
パススルーの精度はまだ他のデバイスと比較すると物足りないところはありますが、トラッキングの精度やモデルの質感は割と良いものでした。

Dream Park

Dream ParkはMRテーマパークともいうべき、XRアミューズメントです。
Quest 3を装着し、マリオブラザーズの世界に飛び込んだような体験が可能です。

以前はこちらのポストが話題になりました。

STYLY & 東京ドーム

日本からはSTYLYと東京ドームが共同出展を行い、未来の宇宙旅行を体感できるVR「THE MOON CRUISE」を展示していました。
デバイスを装着すると展示空間内が拡張され、様々な情報がビジュアルで表示されるものです。

また、最優秀には惜しくも選ばれなかったものの、STYLYはAuggie Awardsにも2部門でファイナリストに選出されていました。

今年CES 2025に参加したときにも感じたように、特にスマートグラス(AIグラス)については多くの人に浸透しつつあることを強く感じました。
Qualcommの発表やMentraの注目もありますが、何よりも会場内でRayBan Metaに遭遇する率の高さですね!日本から出展されていたスマートグラスディスプレイを手掛けるCellidのブースも注目されていました。
「AIにはXRが必要」というOriのスピーチもありましたが、逆に私としては「XRがこれから拡大していくにはAIを取り込むことが必須である」とも感じます。今回見かけたXR系のツールも多くのものがAI機能を有したものでした。

また、手堅いエンタープライズ系のソリューションについても、実験的なものだけでなく「実際にこれくらいの成果が上がった」というものも多くありました。Niantic SpatialやXREALもエンタープライズ面を打ち出していたことも興味深い動きでした。
IDCのこちらのセッションは興味深く、Apple Vision Proが思ったよりもエンタープライズ利用されている実態なども知ることが出来ました。

今回、新規デバイスや新規サービス発表としては思ったよりも控えめだったと考えています。
一方、その中でもSnapのSpectaclesは存在感が大きいものでした。幅広いユースケースやアプリケーションがあり、また実際に購入(レンタル)して感じましたが、細かい演出や使い勝手などが非常によく、このデバイスが更に進化して2026年に発売されると思うとワクワクします。

今年後半にはAndroid XRのSamsungによるProject Moohanが発売されますし、XREALによるProject Auraも来年と考えると、2026年のAWEではAndroid XR旋風が起きるかもしれません。

そこに対してAppleも噂されるApple Vision Proの廉価版が出るのか、またMetaもOrionのリリースも期待されるなど、これからますます業界的に盛り上がりを見せるのではないかと考えています。

来年のAWE USAは、2026年6月16日から18日にかけて、同じくロングビーチで開催されることが発表されました。また来年も現地からレポートをお届けしたいと思います。

執筆:palan代表 齋藤
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