今回はSnapの最新開発者用ARグラス「Spectacles ’24(以下、Spectacles)」および2026年登場予定の一般向けARグラス「Specs」について、公式サイトやAWE 2025での発表、Nianticとの最新パートナーシップ、Snap公式開発者ドキュメント、最新ニュース、実際の体験映像をもとに解説します。
※後述もしますが、現時点でSpectaclesは日本国内では利用申請・公式サポートは未定です。筆者はアメリカのAWE USA 2025の場で現地でデバイスを入手し、体験しました。日本国内での使用については未確認ですので、ご注意ください。
※palanではSpectaclesを技適未取得機器を用いた実験等の特例制度を使用し、実験予定です。
体験にご興味ある方はpalanまでご連絡いただければと思います。
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目次
- Spectaclesとは?
- 入手方法・対象地域・契約形態
- 進化の歴史と2026年発売予定の「Specs」
- Spectaclesの特徴・スペック
- 開発環境・Lens Studio・API
- 活用事例・ユースケース
- ARアプリ開発の流れ
- まとめ
Spectaclesとは?
SpectaclesはSnap Inc.が開発する最新のARグラスで、2024年に第5世代モデルが開発者向けにリリースされました。
ワイヤレス、6DoF、スタンドアロンと、現時点で利用できるARグラスとしては最高レベルの体験が可能なデバイスです。

公式サイト:Spectacles
入手方法・対象地域・契約形態
Spectaclesは「Spectacles Developer Program」への申請・審査を経て利用できます。申請にはSnapchatアカウントが必要で、開発者・デジタルアーティスト・デザイナーなどチームでの応募も推奨されています。
公式サイト(spectacles.com)から申請フォームに進み、必要事項を入力し、審査が通ると契約し入手することが可能です。
大事なポイントとしては、開発機である為に、あくまでも購入ではなく貸与であること(返却義務がある)です。
- 申請:Spectacles Developer Programへの応募(Snapchatアカウント必須、チーム応募可)
- 対象地域:アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、オーストラリア等
- 契約形態:サブスクリプション(1台貸与、12ヶ月契約必須、国ごとに価格設定)
- 価格:
・アメリカ:$99/月+税
・EU:€110/月(VAT込)
・カナダ:CA$139/月+税
(いずれも12ヶ月コミットメント必須、国によって異なる) - 教育割引:
・学生・教員(認定教育機関所属、教育メールアドレス必須)は$49.50/€55/CA$69.50/月(英語のみ、台数・地域限定、条件あり) - 注意事項:あくまでも貸与な為、破損や紛失時には別途費用が請求されます。
日本国内では現時点で一般販売・公式サポートは未定です。申請・利用は対応国のみ可能です。
進化の歴史と2026年発売予定の「Specs」
初代Spectacles(2016)は「カメラ付きサングラス」として登場。以降、2〜3世代目で防水・3D撮影などを強化。2021年の第4世代からはAR表示に本格対応し、2024年の第5世代ではAI・空間認識・マルチモーダル体験が大幅に進化。
また、AWE 2025で発表された内容として、2026年には一般向けにより小型・軽量化(現行比で大幅減)、長時間駆動、AI連携強化の「Specs」が発売されます。既存のSnapchatレンズ(4億本以上)との互換性も確保され、開発資産がそのまま活かせるのも大きな特徴です。

Specs(2026年以降モデル)
Specsは2026年以降に一般向けにグローバル展開予定の新型ARグラスです。現行Spectaclesよりも小型・軽量・長時間駆動・AI連携強化が図られ、Snapchatレンズ資産やAI・空間認識APIとの互換性も確保されます。詳細なスペックや発売時期、対応機能などは今後の公式発表を参照してください。

今後のARグラス市場の本格普及に向け、SpecsはSnapのエコシステム拡大の中核を担う存在となる見込みです。また、WebXRのサポートも発表されている為、より開発や体験の裾野が広がるものになるかもしれません。
Spectaclesの特徴・スペック



項目 | 内容 |
---|---|
重量 | 226g(第5世代)/2026年Specsはさらに小型・軽量化予定 |
ディスプレイ | 46°視野角、37ピクセル/度のステレオWaveguideディスプレイ(自動調光・高輝度) |
IPD(瞳孔間距離) | 58-72mm範囲で手動調整可能、ソフトウェアキャリブレーション対応 |
ARレンダリング | 13ms低遅延、6DoFトラッキング、120Hzリプロジェクション |
カメラ | 2基の高解像度カメラ+2基の赤外線カメラ |
オーディオ | ステレオスピーカー+6マイクアレイ(空間音響・ノイズ抑制) |
入力 | フルハンドトラッキング、音声認識、スマホアプリコントローラー |
プロセッサ | 2x Snapdragon(分散コンピューティング) |
バッテリー | 約45分連続稼働(今後改善予定) |
通信 | Wi-Fi 6/Bluetooth、GPS/GNSS搭載 |
その他 | 折りたたみ式テンプル、度付きレンズ対応 |
対応OS | iOS/Android両対応(iOS16/Android12以上) |
デバイスミラーリング | スマートフォン画面のAR空間投影(最大1080p/60fps)、マルチアプリ表示対応 |
スマホ不要のスタンドアロン動作が可能なこと、タッチパッドやハンドトラッキング、音声コマンドで直感的に操作できます。野外でもある程度はっきり見えますし、自動調光も効いています。
IPDをアプリで簡単に計測・設定可能なのも便利ですね。
またデバイスミラーリングも可能で、動画の撮影も非常に簡単(左側のボタンをクリックするだけ)です。(更にSNSシェアしやすいよう動画の最後にアプリ情報などが表示されます)

デメリットとして、バッテリーは約45分と短く、またある程度使用していると発熱します。
また、締め付けがある為、人によっては使用が苦しいかもしれません。
活用事例・ユースケース
Spectaclesではワイヤレスならではの自由な動きのゲームが多く、またNiantic SpatialのVPS技術を連携したアプリなど幅広い表現が可能です。
また、AI機能を組み合わせることで、例えば日常で目の前にあるものやマニュアルを動的にAIサポートするなども可能です。

例えばこのようなユースケースが考えられます。
- ARゲーム(マルチプレイヤー対応、屋外での協力・対戦体験)
- 教育・トレーニング(現場作業のARガイド、遠隔支援)
- 観光・美術館でのARガイド、インタラクティブ展示
- スポーツ観戦時のリアルタイム情報表示
- 日常生活でのAIアシスタント(翻訳、買い物リスト、レシピ提案など)
- アート・エンタメ分野でのAR作品展示やライブ体験
- Spectator Modeで友人と視点を共有、Phone Mirroringでスマホアプリをグラスに投影
- Niantic VPS連携による「場所連動型AR」や「現実世界の情報拡張」
特にSpectacles以降は、複数人で同じAR空間を共有できる「コラボAR」や、AI・VPSによる空間認識を活用した新しい体験が注目されています。Snapは今後、体験型イベントやポップアップストアでのデモ展開も予定しているとのことです。
実際の体験映像
ARアプリ開発の流れ
Lens StudioでARレンズを開発し、Spectaclesで体験可能です。
まずSnapchatのアカウントと連携を行い、Spectaclesアプリも起動することでLens Studioと同期します。
Lens Studio自体の解説はまた別の記事で行いますが、ここでは簡単なサンプルを実機で試すまで進めてみましょう。
まずLens Studioの最新版をインストールし、HomeからSpectaclesをプロジェクトとして選択します。

様々なテンプレートがありますが、ここではBase Templateを選択します。

このようなロケットアプリケーションが作られます。

Spectaclesでプレビューをするよう選択します。
実際の体験の様子はこちらです!
この後に公開したい場合、Publishメニューから情報を入力し、Publishをします。
審査に通った後にアプリケーションが公開されます。

まとめ
Spectaclesは、AIとARを融合した次世代スマートグラスとして進化を続けています。2026年には一般向けモデルのSpecsも登場予定です。WebXRやローカルAI処理、Niantic VPS連携、Lens StudioやAPIによる開発環境の進化など、開発者・クリエイターはもちろん、一般ユーザーも新しい体験を手にする日が近づいています。
Niantic Spatialとの戦略的な連携を発表、またAWE 2025でもDiamond Sponsorとして存在感を示しています。
月間アクティブユーザー数 (MAU)が9億人もいますし、現時点でのコンシューマ向けARグラスとしては本命と言えるのではないでしょうか。
これからいよいよARグラスで勝負に出るSnapの動向に注目です!


この記事は2025年6月時点+公式サイト・AWE 2025・Nianticパートナーシップ・Snap公式開発者ドキュメント・最新ニュースをもとに執筆しています。