AR(拡張現実)発展の歴史と普及の流れを解説。

近年、ARを用いたサービスやデバイスが多く見られるようになってきました。

サービスとしては、「ポケモンGO」が大ヒットし、世界中で社会現象を巻き起こしました。

デバイスについても、Meta社の「Meta Quest 3」やApple社の「Vision Pro」など、様々なものが発売されています。

このように、最近特に目にするようになったAR技術ですが、実はその歴史は何十年も前から始まっています。この記事では、AR技術の歴史から最新の動向までを解説していきます。

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【年表付き】AR技術の歴史とは

ARが誕生したのは今から約60年前ですが、現在のように普及するまでいくつかの段階があります。本文では主に以下の5つのフェーズに分けて話を進めさせていただきます。

  1. 1960〜:AR技術の始まり
  2. 1990〜:ARの基礎技術の確立
  3. 2007〜:スマホ誕生によるAR×エンタメの発展
  4. 2013〜:グラスARの登場と普及
  5. 2020〜:5Gの登場とARの可能性の高まり

ARの基礎技術自体は、1968年頃からすでに生み出されておりました。その後、1992年頃に医療や航空機訓練等の業務改善を目的に、様々な技術者から開発が進められます。

ただ、大きく、ARが日の目を浴びるようになったのは2007年以降のスマホの登場からでした。「ポケモンGO」などの一般消費者を魅了するようなサービスが次々にローンチされていきました。

そして2010年代になるとハードウェアや開発環境の充実に伴い、更にAR技術が普及するようになります。そして、2020年代以降は5Gの普及に伴いAR技術の発展に拍車がかかっている状況です。

本記事では上記で述べた内容をさらに深掘りして解説していけたらと思っております。

▼AR技術の歴史年表

年代 ARの歴史カテゴリ 出来事
1960〜 AR技術の始まり 1968年 アイバン・サザランドによって世界初のヘッドマウントディスプレイ(HMD)が誕生
1990〜 ARの基礎技術の確立 1992年 ルイス・ローゼンバーグによって「Virtual Fixtures」が開発
2007〜 スマホ誕生によるAR×エンタメの発展 2009年 セカイカメラの登場

2016年 Nianticが「ポケモン GO」をリリース

2013〜 グラスARの登場と普及 2013年 GoogleのAR領域進出

2016年 MicrosoftがHoloLensを発表

2018年 Magic Leap Oneの登場

2020〜 5Gの登場とARの可能性の高まり 2020年 5Gネットワークの展開の開始

1960〜:AR技術開発の始まり

AR技術の始まりとされるのは、1968年にアイバン・サザランドによって開発された、世界初のヘッドマウントディスプレイ(HMD)です。

wikipediaより引用

彼が開発したのが、Sketchpad(スケッチパッド)と言われる技術です。1962年に開発されたSketchpadは、ユーザーがライトペンを使って画面上のオブジェクトを直接操作できることを可能にし、ARにおけるオブジェクト操作とインタラクションの先駆けとなりました。

この時点でのAR技術は原始的であり、現代の体験とは大きく異なります。しかし、物理的な世界にデジタル情報を重ね合わせるという基本的なアイデアは、この時既に存在していました。

▼HUD(ヘッドアップディスプレイ)とは?
Head Mounted Displayの略で、左右の目の視差を用いた立体映像によるVR(仮想現実)の表示装置の総称

1990〜:ARの基礎技術の確立

1990年代前半になると、AR技術の基礎が作られはじめます。以下のような基本的な技術要素を中心に、基礎技術が確立されました。

▼AR技術の基礎

  1. リアルタイムでの画像処理
  2. オブジェクト認識
  3. 現実とのインタラクション

また1992年には、ルイス・ローゼンバーグによって「Virtual Fixtures」が開発されました。

「Virtual Fixtures」はAR技術を使用した最初のシステムです。

wikipediaより引用

航空機の操作能力や医療オペレーション技術の向上といった目的でローゼンバーグが国に提案をしていました。結局、この時点で「Virtual Fixtures」が一般的に利用されることはありませんでした。ただ、現在のAR技術の基礎となる要素が詰め込まれているものでした。

https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201402225755785265

2007〜:スマートフォン誕生によるAR×エンタメの発展

スマートフォンの登場によって、AR技術は一般消費者に大きく認知されるようになりました。ただ、スマホ登場以前もARを活用したプロモーションやゲーム等は存在しました。

ここでは、エンタメ×ARのスマホ登場以前と以後で話を進めさせていただきます。

スマホ登場以前のエンタメ×AR

2008年に、BMWが初めてARをプロモーションで活用しました。BMWは印刷物にARを付与し、ユーザーにAR体験を提供しました。

引用元:PRESSCLUB GLOBAL · PHOTO.|BMWGROUP

また、2009年には位置情報スマホアプリ「セカイカメラ」がリリースされました。

「セカイカメラ」とは、頓智ドット株式会社(当時)が開発した携帯向けARアプリです。

様々な場所でアプリを起動してカメラをかざすと、「エアタグ」と呼ばれる情報を空間上に表示します。

この「エアタグ」は他のユーザーが設置したものも閲覧可能であり、当時はたくさんのエアタグが設置されていました。「セカイカメラ」は、多くの人にARの概念を浸透させたパイオニアと言われています。

ポケモンGOの人気

スマホを活用したARサービスとして、最も名高いのがポケモンGOです。2016年Nianticがリリースしたゲームです。

「ポケモンGO」とは、アプリのAR機能によって現実世界とゲームの世界が重ねられ、ユーザーは現実の街中を歩きながらポケモンを集めることができるゲームです。

このゲームはAR技術を用いたモバイルゲームの大ヒット作となり、世界中で社会現象を引き起こしました。一般消費者にAR技術の魅力を広く知らしめるきっかけになりました。

2013〜:XRデバイスの登場と普及

2013年以降には、様々なXRデバイスが誕生しました。それが皆様の知っているようなXRデバイスです。

▼2013年以降に登場したXRデバイス

  1. Google Glass
  2. Oculus Quest・Meta Quest
  3. HoloLens
  4. Apple Vision Pro

この時期は、エンターテイメントでポケモンGOがローンチされ、AppleがARkitをローンチし開発環境が整備され始められるなど2010年代はAR技術にとって大きな変化が起こり始めた時期です。それぞれ以下で解説していきます。

GoogleのAR領域進出:Google Glass

Google Glassは2013年に限定公開され、2014年に正式にリリースされました。

これにより、グラス型デバイスを通じたAR体験の可能性が広く知られるようになりました。

wikipediaより引用

Google Glassは、ウェアラブルコンピュータとしての機能を備え、リアルタイム情報表示、ビデオ録画、インターネット検索などが可能であり、将来のAR技術の方向性を示す重要な一歩になりました。

Magic Leapの登場

Magic Leap社の最初のプロダクト「Magic Leap One」は、2018年8月からアメリカで2,295ドルで販売開始されました。そもそも、Magic Leap(マジックリープ)はヘッドセットを装着することにより、仮想空間と現実世界を融合した体験ができるMR(複合現実)ツールです。

Magic Leap社は、自社のプロダクトコンセプトを説明する際に、「AR」という単語を使わず『Spatial Computing(スペシャルコンピューティング)』という単語を使用しています。ARというカテゴリーに収まらずその先を見据えているからこその表現であると推察されます。

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Meta社のAR領域進出:Oculus Quest・Meta Quest

Meta社(旧称Facebook)は、Meta Questを2020年に発売しました。MetaQuestは自社の一部門「Facebook Technologies」が開発したOculus Questの後継となるヘッドセットです。

その後、Meta Quest2など後続機が発売されており、「はじめてのQuest」というMeta Quest2のチュートリアルとなるゲームや、「Beat Saber」といった人気のVRの音楽ゲームが公開されています。

Meta Questの誕生は、AR市場に大きな転換をもたらしました。それまでのARは、高価なPCと専用の機器が必要であり、一般ユーザーにとって敷居が高いものでした。Meta Questは、そのハードルを大きく下げ、ARをより多くの人々にとって身近なものにしました。

Microsoftの参戦:HoloLens

2016年MicrosoftがHoloLensを発表し、エンタープライズ向けに高度なAR体験の提供を始めました。

HoloLensはより高度な空間認識技術とインタラクティブなユーザーインターフェースを備えており、教育、製造、建築などの分野での応用が進んでいます。

Appleの参入

2017年AppleはARKitを発表しました。ARKitは、iPhoneやiPadといったiOSデバイス上に搭載されている機能です。

またARKitは、高品質なAR体験を簡単に開発できるプラットフォームにもなっており、これによって開発者コミュニティが活性化されました。

▼ARKitとは?
ARKitは、デバイスのモーショントラッキング、カメラによるシーンの取得、高度なシーンの処理、便利な表示機能を組み合わせたもの。AR体験を容易に構築できるようにします。iOSデバイスのフロントカメラまたはバックカメラでこれらのテクノロジーを使って、さまざまなAR体験を生み出すことができる▼関連記事
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このARKitによって、iPhoneやiPadを使用して、ゲーム、教育、小売など様々なアプリケーションでAR体験を楽しむことが可能になりました。

また2023年には、Apple Vision Proを発表しました。ただ、Appleはデバイスを「空間コンピューティング」と呼ぶようガイドラインを出しており、ヘッドセットと一線を画したものになっております。

Appleは、ARKitやApple Vision Proの提供、周辺技術の開発も行っていることから、AR開発に力を入れていることが分かります。

デバイスとして普及率が高くなることも予想され、ARの歴史が変わるのではないかと注目されています。

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2020〜:5Gの登場とARの可能性の高まり

2020年の5Gネットワークの展開とともに、AR体験はさらに向上しています。5Gとは、それ以前の4Gと比べて高速かつ大容量の通信を可能とします。

これにより、複雑でリアルタイム性が必要なARアプリケーションの提供が可能になり、商業、教育、エンターテイメントなど、さまざまな分野での新たな応用が期待されています。

▼5Gとは?
5Gは、第5世代移動通信システムの略称で、高速・大容量通信、低遅延、多数同時接続を特徴としている。例えば、通信速度のさらなる向上や、低遅延の更なる低減、さらに多くのデバイスを接続できるようになるなどが期待されている

 

まとめ

1960年から始まったARの歴史と最新の動向について、解説してきました。ARは数十年前から始まり、基礎技術の確立とともに軍事訓練などの用途でARが使われるようになりました。

その後、スマートフォンやXRデバイスの誕生により、ARが一般に普及していきました。

そして現在は各社で開発が進んでおり、5Gネットワークの展開やARを用いたゲームの大ヒットからも、ARは今後さらに発展していくのではないかと推察されます。

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